高校に入学する直前、両親が殺された。驚きはしなかった。そういう世界に生きていた人達だったから。父親は一般人を装った組織の人間。母親はFBIの人間で組織に潜入をしていて、父に近づいて、仕事として結婚し、私が産まれた。そして、父は愛する人がFBIだとは知らずに死んでいった。けれど、母親は自分の正体を娘の私には教えてくれていた。きっと、隠し通せなかったのだろう。それからしばらくして、殺された。

思えば、母親が正体を明かしたあたりから殺される予兆はあったのかもしれない。私は母の本当の正体を聞いても、私も父も母も本当の家族と大して変わらず、普通の日々を送っていたので、特に深くは聞かないようにした。それに、母は仕事上だったとはいえ、父の事をちゃんと好きな様に見えていたから。もうそれを知る術はないのだけれど。

身寄りの無くなった私は、組織の人物であるジンの監視下に置かれた。殺される時にやはり母親がFBIだとバレてしまい、FBIが私を餌に組織を潰しにかかるかもと警戒されたからだ。そして、ジンは私の保護者代わりの人物になった。と言っても、特にアレコレと制約がある訳ではなく、私は今、普通の大学生活を送っているし、組織の事はよく知らないままだったけれど不自由なく生活は出来ているので、困っていることはなかった。

ある日、ジンが忙しくなって、私の監視が難しくなるという事で、2人の人物が家にやって来た。これまでにも何人か来た事があったので、いつも通り挨拶を交わした。名前はライとバーボン。ライはニット帽で長髪なのが特徴的で、バーボンは褐色の肌に金髪。何となく対称的な2人だなと思った。けれど、ライは何となく見覚えがあった。確か1度母親と話しているのを見た事がある。母に誰? と聞くと私の仲間よ、と答えた。という事は。挨拶を終え、今日はライが泊まっていくという話になり、個別で4つある部屋のひとつをライの部屋にした。ジンの部屋ももちろんあるし、あともう1つはバーボンの自室になるだろう。リビングに2人で移動して、ジンとバーボンが帰って行く音が遠ざかったのを確認し私は口を開いた。

「ライって組織に潜入してるFBIですよね?」
「上杉のお嬢さんに会えて良かったよ。両親を亡くして心配していたからね」

やっぱりそうなんだ。

「FBIが私を保護しに来たんですか?」
「いや、アメリカで身を隠す事も出来るけどいろいろ手続きが大変でね」

その方が確実に安全なのだけれど、私はなぜかジンとは離れがたかった。世間的から見ると彼は"犯罪者"なのだろうけれど、私からすれば父親と同じく私を守ってくれる"大切な人"なのだ。ホッと胸をなで下ろしたのも束の間だったのだけれども。

「たぶん、保護される時は日本の警察だろう。ういに探りをいれている」

両親の事があってか嫌な予感がした。ジンに何かこれから起ころうとしているのではないかと。

「ライそれって、どういう」
「近いうちにわかるとは思うが」

それ以上深入りされたくないのか持ってきていたパソコンを開いて、何やら仕事を始めてしまった。私もそれ以上は聞きたくなくて、夕飯食べていきますか? と日常に戻すのだ。



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