「この度見廻組から参りました。上杉ういです。皆さんのお力になれるよう頑張ります。あまり宜しくしたくないですが宜しくお願いします」

事務長として見廻組から異動してきた上杉の自己紹介。見廻組という単語と上杉の態度にザワつく隊士達をまとめる様に、近藤さんが苦笑いで喋り出す。

「……という訳だ。事務長と言ってもトシのサポートが主な仕事になるが、これからは上にあげる書類は彼女の元に持っていくように」

近藤さんがそう言うと、隊士からそれぞれわかりましたと声がまばらに聞こえた。少し不穏な空気を残したまま、真選組の事務長お披露目は終わり、それぞれの持ち場に戻っていた。今日の俺の最初の仕事は、俺の書類仕事を上杉に引き継ぐことだ。一応事務員はいるが、人が変わるがわるで落ち着かず、俺が勝手でてまとめ役をしていたが、手が回らなくなったきた。事務長を雇うべく本庁に申し出てやってきたのが上杉という訳だ。

「真選組が1番損害を出してますからねー。あなた達は破壊神ですか」
「切り込み隊長様がバズーカをぶっぱなすからな。損害を止めたきゃアイツをとめてくれ」

事務室に案内し上杉の席に案内する。来て早々、溜まりに溜まった書類を押し付けるのが申し訳ない。上杉を見ると引きつった顔をしている。

「これ片付くんですか」
「片付く前に次の書類がくる」
「見廻組に帰りたい。そろそろ3時。信女ちゃんとドーナツの時間」

上杉が携帯を開いた画面を見せてもらうと、佐々木から今井信女がドーナツを食べている画像が連続して送られてきていた。今井信女がドーナツを頬張りピースをしている写メと目の前の書類を交互に見やると何かを決意したように携帯を閉じた。

「信女ちゃんが呼んでるので私は帰ります。じゃ」
「じゃ、じゃねーよ。ドーナツでも何でも買ってきてやるから」
「ここで食べても意味なんてないの。机の上の書類が片付いた状態で佐々木局長が買ってきてくれたドーナツを信女ちゃんと食べるのがいいんでしょうが。帰る」

一息でまくし立て本気で帰ろうとする上杉の腕を掴み引き止める。もちろん大人の男の力に適うはずもなくその場でジタバタともがくだけ。少しすると諦めたのか大人しくなったが、こちらを振り返って意地悪く笑った。

「離してください! 副長さんが襲ってくる!」
「バカ! おい! やめろ!」

びっくりして手を離すと、どうだという顔を向けてくる。幸い上杉の声は通っていなかったのか様子を見に来る者はいなかった。

「冗談ですよ。今日中に書類を片付けてしまいましょう。またすぐに次の書類が来るんですよね」

何事もなかったかのように、席に座り書類に取りかかり始めた。呆気に取られている俺に、副長さんも早く仕事してくださいと言い放ってきた。いつまでも俺もここで固まっている訳にもいかないので、言われたとおり仕事を開始する。

「上杉、本当はここに来たくなかったんじゃねぇのか?」
「来たくないですよ。そもそも真選組とは仲悪いじゃないですか。上から言われなければこんなとこ来ません」
「確かに上には逆らえねぇな」

会話は途切れ黙々と仕事に取りかかった。ふと上杉を見ると真面目に取り組む横顔。きっと、あの帰りたい発言は本心だろう。あとで、甘いものでも買ってこようと机に向かい直した。



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