私の自宅のソファで苦しそうに息を整える女の子。また施設を抜け出してきてしまった。

親に虐待を受けて、施設に預けられたはいいが施設が嫌で、度々抜け出しては、私の家に来てしまう様になった。発端は夜中に公園で蹲る影を見つけたところから始まった。出会った頃の体中の傷跡はだいぶ薄くなってはいるが、彼女の心の傷は癒えることはないだろう。拾って家に連れて来てしまったのがいけなかったのだが、後悔していても遅い。

施設のスタッフはういを探していると思うが無闇に、差し出しても過呼吸が悪化するだけだろうし。まさかスタッフもヤクザの家にいるだなんて思いもしないだろうから、見つかることはまずないだろう。今日も落ち着かせて、朝になったら施設へと帰るように説得をしなければいけない。

親から受けた事を思い出しては止まらない過呼吸。見ているこちらも辛くなるほど息が苦しそうで。ゆっくりと深呼吸をする様に促せば、ほんの少しだけ息をするペースが遅くなる。ゆっくり背中をさすりながら、俺の合図で吸って吐いてを繰り返す。だいぶ落ち着いてきたところで手は痺れてないか、頭は痛くないか確認する。

「帰りたくない」

消え入りそうな声で呟いた声とともに、ういの体が俺に倒れこんできた。

「朝までならここにいていいから」

朝なんて来なければいいと力が入っていない手でシャツの裾を握られた。



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