ホストクラブ『シルバー』は歌舞伎町で1・2位を争うお店。通い詰め慣れた道を歩き、扉を開けるといつも通りボーイに迎えられ席に案内をされる。髪型を直していると、黒のYシャツに白ネクタイのトシがやってきた。ちゃんとプレゼントしたネクタイをしている事に、気をよくした私は早速シャンパンをおろした。晋助を指名している女の人には負けたくない。今日彼氏入ってるし。

しばらくしてお酒も進み、いつも私が話しているのは学院の愚痴だったり、晋助の愚痴だったり。トシにいつも聞こえるぞなんて注意をされるけど、あっちはあっちで接客に夢中で聞いていないのだから。面と向かっても聞いてくれないのに。

「この間ラブホから出てくるの見ちゃったんだ」
「マジかよ」
「マジだよ」
「しかも私に気づいてたっぽい」
「もう別れろよ」
「嫌」

自分でもよくわからないけど、晋助と別れたら私には何も無くなってしまう。ずっとそんな気がしているのだ。トシの気持ちに気付いていないわけではないのに、私は相当ひどい女だと思う。仕返ししたいんだ、なんて。強引にアフターに誘ってラブホに行っちゃって。お店を出るときにわざと晋助の前でトシと腕を組んじゃったりなんかして。

アメニティが充実していると最近話題のラブホに到着して、適当に部屋を選んで入った。ベッドに腰をかけて他愛もない話しをしているけど、ずっとトシが浮かない顔をしているのでどうしたの? と聞いてみる。

「俺、明日からどんな顔して高杉と顔合わせればいいんだ?」
「んー、無視でいいんじゃない」

無視ってとかブツブツ文句を言っているトシの声を聞きながら首回りの汗が気になる。シャワー浴びようかな。おい、なんて呼び止める声が聞こえたけどそれを無理やり、先にシャワー浴びるねと洗面台に移動し、シャンプーとリンスそれぞれ気になっていたのを選びシャワーを浴びた。

シャワーを浴び終え、白々しく次どうぞと声をかけたけど結構あっさりとシャワー室に入って行った。その様子にちょっと驚きながらもベッドの隅で頭を乾かす。トシの頭も乾かしてあげようとドライヤーをそのままに携帯のチェック。晋助から何も連絡が入ってないのに少し苛立っているとトシがシャワー室から出てきた。私がドライヤー片手に乾かしてあげるというとまたあっさりと私の目の前に座った。いつもなら少しは自分で乾かすとか抵抗をしてくるのに、どうしたんだんろう。髪を乾かし終えて、ドライヤーを片づけているとトシが後ろから抱きしめてきた。突然のことで腕を離そうと試みるけど、到底男の人の力に敵うはずもなくそのままベッドに押し倒されてしまった。何度かトシとはラブホとかには来ているけど、こんな雰囲気になったことはなく、動揺を隠せてない私をどこか面白そうに見下ろしてくるトシがそこにいて、頭が真っ白になる。

「ど、ど……どうしたの?」

茶化すように聞いてみるけど自分でも声が震えているのがわかる。

「俺の気持ちわかってんだろ? あんまり煽るようなことするな」

ごめん。そう言おうとしたけど、その時にはトシに唇を奪われていて。ついに、私は一線を越えてしまったのだ。なぜか気まぐれに優しくしてくる晋助の姿を思い浮かべてしまってごめんねと謝った。

title:サディスティックアップル



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -