「じゃあ、報告は以上で。運転手さん適当に」
「ういは乗せたままでいいから、俺の家に向かってくれ」

粟楠で雇っている運転手なので、私の言葉は綺麗に流され、止まろうと速度を落としていた車は速度を徐々に速度を上げ始めた。

「適当に降りてどうするんだ? 家なんて無いだろ」
「今日はちゃんと臨也の所に帰るつもりだったんですけど」

ずっと、フラフラと生きていた。それでも、高校生3年生はなぜかしていて、そんな目的もない日々が過ぎていく中で、私の事を面白いと新宿の街で臨也にスカウトをされた。行ったり行かなかったりだった高校をあっさりと辞め、お世話になった施設へのお礼もそこそこに臨也に言われるまま一緒に住み始めたが、同じ所にいるのは性に合わなくて、いろんな男の人の家を渡り歩いている生活は変わらずにいた。臨也の助手として一応情報屋を生業としている身だけど、臨也の提案で1つのところにいる練習と称し粟楠会専属の情報屋をしているのだ。

他の人に聞かれたらいけない話なので、適当に街の中を走る車内での報告がベター。いつもなら、すぐに降ろされるのになぁ。私の中で仕事は終わってしまったので、四木さんとプライベートで会話する内容が全然思いつかない。別に、沈黙が苦痛というわけではないので、流れるネオンを眺めていると、高層マンションの前に車が停まった。降りるぞと言われ、素直に車を降りた。四木さんは運転手にお礼を言うと、マンションの玄関口に入っていく。どうしたらいいかわからず、とりあえず四木さんの後を着いていく。エレベーターに乗り込み1つ気がかりな事があるので、四木さんに聞いてみる事にした。

「あの、四木さん。私、枕営業だけはしない様にしているんですけど」
「誰が子どもに興味があると言った」
「私、本当に四木さんに信頼されているのか疑問に思うことが多々あるんですけど」
「情報は確かだからな」
「信頼しているのは、情報だけですか」

何か、悔しい。マンションの最上階に着き、エレベーターを降りる。部屋の扉の鍵を開け、玄関に入った四木さんの体を壁に押さえつけようとしたら、わかっていたように腕を引かれ私が壁に押さえつけられてしまった。

「俺に仕掛けるとは少し面白いじゃないか」

意表をつかれ、咄嗟に言い返せられなかったのがまた悔しい。

「少しでも興味を持って欲しいなんて私が思うのは結構レアですよ? 四木さん」
「俺がうい自身を気に入るようにもっと頑張るんだな」

そう言って、四木さんは部屋の奥に消えていく。その後を追って、部屋に入るとソファに座るように言われる。

「で、何で私を部屋に上げたんですか」
「他のところで情報を漏らされても困るからな」

本当に信頼されてないんだな。それはつまり、

「見張りって事ですか?」
「そんな所だ。粟楠の大切な情報を持っている間は俺と暮らしてもらうからな。折原から了承はもらってる」
「また、唐突な話しだこと」

まぁ、いいや。四木さんに興味を持ってもらえるチャンスだと思うことにしようって考えとどう脱出しようかな、なんて。やはり、私はじっとしているのがどうしても苦手らしい。

「逃げるなんて考えるなよ」
「四木さん、結構私の事好きですよね?」

大人をからかうなと言った四木さんの余裕の笑みに、やはり私なんて眼中にないのだとまた私の心を煽ってくるのだ。

title:サディスティックアップル



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