隣に好きな人がいるのに眠れないのは、知らない匂いがするからなのかな。なんで、疲れたなんて言ってさっさと寝てしまうのだろう。お風呂くらい入るか入ってきてくれたらいいのに。文句しか出てこないけど、離れられない自分に1番腹が立って余計に眠れない。

晋助が寝返りをうって、余計に匂いが際立つ。また、怒りが込み上げてくる。向かい合わせになった寝顔を見ると、俺は何も知らないって顔をしている。やっぱり苛立ちは治まらなくて、鼻を思い切り摘んでやった。元々眠りの浅い晋助は、目を覚まし私の手を掴み何してる? と低い声で言った。

「腹が立ったから」
「何にだ?」
「自分の胸に手を当てて聞いてみてください」

掴まれてる手を強引にはずし、背を向けると後ろから抱きしめられる。知らない匂いに包まれる私。せめて、まだほろ苦い煙草の香りに包まれていた方が安心すらする。それが嫌で身をよじって逃げようとするけど、意外と筋肉のついている腕にしっかりと体を抱きとめられてしまった。

「ねえ、抱きついてもいいからお風呂入ってきて」
「何だ? したいのか?」
「そうじゃない、ばか」
「なぁ、何怒ってるんだ。……土方とういが寝たって知って俺の方が怒ってるんだが」
「何で、知って」

ホストの情報網舐めんじゃねぇと耳元で囁かれ、くすぐったくなる。心はくすぐられている所じゃないけど。

「晋助だって、今日だって、知らない匂いするし、ラブホから出てくるし、私の方がわからないよ」
「俺は無罪だ。客となんか寝ちゃいねぇよ。どうせ信じてもらえないんだろうけど。何で、ういは俺にホスト辞めろって言わねぇんだ」
「言って言うこと聞いてくれたことないもん」

よくわかってるじゃねぇかと更にキツく抱きしめられる。だから、匂いが嫌だって言ってるのに、何でこんな事ばっかしてくるかな。きっと晋助の趣味は私を虐めることなんだろう。付き合う前からそんな節がある気がする。

「で、ういは弁解しないのかよ。土方とのこと」
「ホストの情報網舐めんじゃねぇ。じゃないの? ほんとだよ。でも、トシがそんな事してくるの初めてだったから不可抗力だよ」
「土方もよくわからない女好きになるよな」
「それ、晋助が言う?」
「俺に口答えするのもいい加減にしろよ」

体が離れたかと思ったら、晋助の顔が真上にある。

「仕置きだ。この香りのまましてやるよ」

ちょっと、と抵抗する間もなく腕を抑えられて無理やり口付けをされた。距離がない私達の間には知らない誰かの香りが漂っていた。

title:サディスティックアップル



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