休み時間は元気な生徒達。授業中も、もうちょっと活気があってもいいものだが仕方ないかと昼休みに担当学年の教室の廊下を見回りがてら歩いていた。声をかけてくる生徒や最近気にしている生徒などを相手にしながら歩いていれば、自分が担当するクラスの前へ。
 最近、担当クラスの昼休みにあまり顔を出して
いなかったなとクラスに入る。すると俺の目に飛び込んできた光景は、ういが仲よさげに男子生徒と話しをしている様子だった。
 その楽しげに話すういを見て思ってしまったのだ。俺みたいな年の離れたヤツと付き合っているより、やはり同年代の男との方がいいのでは、と。

「あっ! 土方先生だ! もうお昼食べたんですか?」
「……あ、ああ」

 話しかけてきてくれた生徒にも生返事になってしまう。これではいけないと気を取り直して、声をかけてきた生徒のグループと向き合おうと話し始めるが、ういと男子生徒がどうしても視界に入ってきてしまう。
 何よりすごく楽しそうにういが笑っている。ういはとても気使いだからきっと年上な俺には気ばかり使っているのだろう。ましてや同棲。気苦労も多いのではないのか。

「先生? 聞いてます?」
「何か上の空ですよね。体調悪いんですか?」
「いや。悪いわけじゃない。……そろそろ職員室戻るわ」

 これでは教師失格だ。また教室を出る前にそちらを見てしまっている自分に嫌気がさしてしまった。


家に帰ってういと喋っていてもどうしても今日昼間に見た光景が頭の隅でちらつく。ういにも「体調悪いの?」と聞かれてしまう始末だ。

「悪い、わけじゃない」
「何かはっきりしないなぁ。ほんとに大丈夫」

 ういは俺の額に手の平を乗せて、熱があるかどうか確認し始める。「うーん、まぁ、熱はないかな? 一応風邪薬飲んでおく?」と俺の隣に座っていたういが立ち上がる。俺は衝動的にういの腕を引っ張って抱きしめてしまう。「トシさん?」と不思議そうに俺の顔をのぞき込んで来たので、そのまま唇を奪って離せば「いきなりどうしたの?」と状況に着いてこれていないようで。混乱させているのは俺であることは確かなのだが。

「……嫉妬だ。俺といるより同年代のヤツとの方がほんとはいいんじゃないか?」
「え?」

 この際だから素直に話してしまおう。口に出して言ってしまうと余計自分の心の醜さが際立ったような気がして、ういの顔を見られなくてつい視線を逸らしてしまった。
 ういが視線を合わそうと無理矢理俺の顔をのぞき込もうとしてきたけど、変な意地を張ってしまいこちらも負けじと顔を逸らした。俺ってこんな子ども染みた人間だったのかと。それも年下相手に大人げない。そんな事をグルグルと考えているとういは俺の両頬に手を沿えて、強引に俺と自分の顔を合わせるようにしたかと思えば、次は俺がういに唇を奪われていた。離れていったういの顔は真っ赤だ。それもそうだろう。ういがこんな大胆な事をするのは、なかなかないので俺ですら驚きを隠せていない。

「よくないよ。私はトシさんだから好きなんだよ。そんな事言わないで」

 泣かせたい訳ではなかったのに、ういの目には涙が浮かんでいる。それを見て焦る俺はまだまだ子ども、なのだろう。

「悪い。……その、昼休み木下と楽しそうに話してるのみて、だな」

 ういは「あの時か」と納得し、一人頷いたあとこう続けた。

「でも、トシさんも嫉妬するんだって知ったら何か安心しちゃった。私も同じだよ。私だってこんな年下と付き合って楽しいのか? ってやっぱり思っちゃう時もあるし。だから、良かった」

 そう言ったういに再度キスをして、「俺もういだから好きなんだ」と答えると、「私たち似た者同士だね」とういは嬉しそうに笑った。





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