「ねぇ、大好きって言ってみて」
「大好き」
「何か違うんだよねー」と間の抜けた言葉とともに彼女はベッドへ力なく沈む。違うも何も俺はセフレとという立場だし、彼女からそんな事を望まれても最大限には応えられない。……なんて事はういが一番理解しているハズなのに。何でまたこんな事を言い出したのか。
「じゃあ、愛してる。か?」
冗談半分で言ってみると枕に沈めたういの頭から小さい笑い声が聞こえる。ういは必死で押し殺しているつもりだろうがきちんと俺の耳まで伝わってしまっている。ベッドの端に座ってタバコを吸っていた俺は、灰皿にタバコを押しつけ、小さく揺れながら笑っている布団の塊の上に乗っかってやった。
「待って! 苦しい!」
「笑った罰だ」
布団事抱きしめてやると笑い声は止んだ。
「ごめん、ごめん。晋助には愛してるも大好きも似合わなかったね」
「バカにしてるのか?」
「してないよ。そうだなぁ、晋助には……」
一瞬、寂しい目をしたういと目が合った気がした。自分に向けられている感情を知っているのか。知らないのか。きっとういは勘違いしたまま俺の元を離れていくのだろう。こんな男と一緒にいたって、ういは幸せになれないのだ。ちゃんと真剣に。真っ正面からういの事を愛してると言ってくれる奴と幸せになって欲しい。俺がういに今更そんな事を伝える権利もないのだが。言ったとしても、ういは笑うだけだろう。
「晋助には、気が向いたらな。かな」
「……気が向いたら、また呼んでやるよ」
「うん、それだね。合格」
涙目の彼女が俺の唇にキスを落とす。ういに対してそんなつもりは毛頭無いが、もう信じてはもらえないのだ。そんな苛立ちを誤魔化すように、ういの後頭部を押さえつけて、強引にキスをした。
「晋助。好きだよ。……愛してるよ」
「俺もだ。……じゃないか。気が向いたら、だっけか」
「うん」
またういの縋るようなキスに応えて、愛してると想いを込めてキスをする。一生終わらない負のループに嫌気なんてさし飽きてる。きっと誰にもこれは止められない。いや俺自身止める気がないだけ。ただそれだけの話だ。