いつもの夜。四木さんは私を抱いて眠りにつく。
今日こそはちゃんと気持ちを伝えようと心に決めていた。夜だけ会って好きなだけ抱かれて、よく考えればこれじゃあただの都合のいい女なのだ。そんなのは嫌だ。四木さんから見れば全然子どもな私だけど、私だって成人した女性なのだ。

ウトウトし始めた頃、朝が近づく。やはり好きな人といる時間は過ぎるのが早く感じてしまう。でも、それも今日で終わり。振られたら、振られたでいいのだ。そうなったら、前に進もう。四木さんとの事はキレイさっぱり忘れてしまおう。いつも通り四木さんは目を覚まし、私を確認して少し驚いた表情をした後にこう言った。

「寝れなかったのか?」
「違うよ。四木さんが起きるの待ってた」

私も起き上がり、逃げないように四木さんの腕を掴むと、油断していたのか立ち上がろうとした姿勢を崩してベッドに座った。背中を向けられてしまったが、返答をもらうまで絶対に離さない。けれど、四木さんが振り切ろうと思えば振り切れるのに大人しく従ってくれている四木さんはやっぱり優しいのだ。

「どうした」
「私ね、四木さんが好きなの。家だけじゃなくて彼女として外でデートとかもっともっと恋人がしたいの」
「……」

何かを考えているのか黙ってしまった四木さん。急に困らせてしまったと怖くなって腕を掴んでいた手を離してしまったけど、四木さんは留まってくれた。その様子に話しは聞いてくれるのだと少し安心をする。

「四木さんは私のことどう思ってるの? 都合のいいセフレ?」
「そんな風に思ったことは1度たりともない。それだけはわかってくれ」

慌てたように首だけ私の方を振り返りそう言った。だから、つまりどういう事なのか聞きたいのに、何で確信に触れられるのを嫌がるのだろう。

「四木さん、私の質問に答えて。私の事、好きですか?」

ため息が聞こえた。あぁ、もうダメなんだ。そう思った時、優しくけれどどこか力強く抱きしめられた。最後にってやつかな。私も四木さんを抱きしめ返す。ここ何ヶ月か幸せだったな。

「誤解が過ぎてるな。俺はういが愛しくてたまらない。俺が、俺が怖いんだ」

突然の四木さんの告白に少し困惑する。一体何が怖いのだろう。好き同士なら怖いことなんてないじゃないか。

「俺の仕事は人に言えるような職ではないし、ういはまだ若い。俺なんかと一緒にいてはいけないと、わざと嫌われようとしていたけど、中途半端にしてた俺が悪かった」

こんなに饒舌な四木さんを見たことはなくて。こんなに思われていたなんて。幸せが涙となって溢れてくる。それを見た四木さんは泣くな、ごめんな。とやさしく頭を撫でてくれた。

「私、そばに、いていいん、だね?」
「いてくれなくては、俺が困る」

上手くしゃべれないほど涙が止まらなくてそれから四木さんは何度も不安にさせてすまなかったと私を慰めてくれた。疑っていた自分がとても申し訳なくて、嗚咽に混じりながら私もごめんと謝った。窓の外から朝日が差し込んできて、初めて四木さんと2人で朝を迎えた。これからは、明るい世界でも四木さんに触れられる。それが嬉しくて、私はまた四木さんに抱きついた。小さく聞こえた好きだ、愛してるにまた涙が止まらなくなった。

title:サディスティックアップル



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