仕方の無い事だとは思っている。俺の彼女はまだ二十一で大学生。大学は女子大ではなくて、共学。サークルや付き合いなどで、男女混じって飲みに行くのは当たり前の事だ。普段からそう何回も会えるような職種では無いので、正直なところういの交友関係に詳しくないのは事実。それでもきちんと今日は友達とご飯で帰りは遅くなる事や合コンの数合わせを断りきれなくて参加してしまう事、俺とういのメッセージ欄はほぼういからの今日の予定と化している。ろくにメッセージを返せてないというのに。俺は幸せ者だろう。

今日は男女数人で飲み会だそうだ。珍しく少し時間が空いた俺は楽しんでこいとだけ返す。それからまた任務に戻りあっさりと片付いてしまった。明日は一応休日扱い。愛車の運転席に座り時刻を確認すると九時頃。ういの飲み会は七時頃からだと連絡が来ていた。二時間も飲めばそろそろ帰る頃なのでは。遅くはない時間だが迎えに行ってもいいものだろうかと少し考えながら適当に車を走らせる。

……近くまで行ってみるか。ウィンカーを出して、車線変更。次の角を曲がった。

飲み会が行われている店まで来てみたら、丁度それらしき団体客が店から出てきた。ワイワイとうるさい中でもそのグループからは二次会どうする? と言う会話が聞こえてくる。

「私はそろそろ帰ろうかな?」
「えー、何でういちゃんも行こうよ」

その中にういの姿、と馴れ馴れしい男の姿。ういを狙ってるのが丸見えだが他の男もチラチラとういがこの後どうするかを気にしている素振りを見せている。……モテるんだな。自惚れていると言われてもいい。ういはこんなにも会えなくて、彼氏らしいことも出来ない男に対して真っ直ぐに好きですと気持ちを伝えてくれる人なのだ。きっと大学でも優しく周りから人気があるのだろう。この一場面からでもういの人柄がよくわかる光景だ。

しかし、俺以外の男がういの隣を陣取り離れようとしないのは、見ていて気分が悪い。仕事上では有り得ないが考えるより先に体が動いていた。

「うい、迎えに来たぞ」

突然の登場にういは固まってしまった。俺が迎えに来るなど想像もしてなかったのだろう。「え? えっ?」と混乱しているういの隣にいた女友達が「ちょっと、うい! このカッコイイ人、誰?」と興奮気味だ。ういに言い寄ろうとしていた男は何かを察したのかすぐに距離をとっている。

「ちょっと落ち着いてよ、ユリちゃん。えっと、私の彼氏さんだよ」

初めてういも周りに彼氏を紹介するのが少し恥ずかしいのか言葉尻が小さくなっている。場を騒然とさせてしまったが、ここに長居している気はない。周りの反応はお構い無しに俺はういに再度声をかけた。

「そこに車を停めてある、帰るぞ」
「あ、うん。……じゃあ、またね。みんな、おやすみ」

先に歩き出した俺の背中越しからみんなが「おう、またな」など動揺を隠しきれない挨拶をういに返しているのが聞こえる。ひとしきり、その場を収めただろうういが小走りでやって来て俺の横に並んだ。

「いきなりどうしたんですか? すごくびっくりしました」
「たまには彼氏らしい事でもしようかと思ってな。いきなりすまなかった」
「いえ、それはいいんですけど」

車の鍵を開けて、助手席を開ける。「ありがとうございます」とお礼を欠かさないういにやはり好きだと再確認をしてしまう。自分も運転席に乗り込み車を発進させた。

「……秀一さん?」
「何だ?」
「その、ごめんなさい」
「なぜ謝る」
「さっき男の先輩が近くにいた時、秀一さん見た事がないくらい目が怖くて。その、嫌でしたよね」

表には出してないつもりだったが、そう言われて自分も案外年甲斐も無く嫉妬して態度に出してしまうのかと少し情けなく感じてしまう。

「……気分良くはなかったが。そんなに表情に出してるつもりはなかったな」
「わかりやすかったですよ。いつもポーカーフェイスな秀一さんでもあんな嫌な顔するんですね」

あの時の俺の表情を思い出しているのかクスリと笑い出す。

「俺もまだまだだな。これが仕事だったらFBI失格だ」
「でも、嬉しかったですよ。秀一さんも嫉妬してくれるんだなって」

ういが嬉しそうならそれで構わないか。横で楽しそうに話すういの顔はアルコールが入っていて、少し顔が赤い。やはり俺も仕事から外れればただの男なのだと思ってしまう。

「うい、明日は?」
「明日は授業がズレたので大学は無いですよ。予定も無いです。秀一さんは?」
「それは良かった。俺も明日は休みだ。……今日、俺の家に泊まって行くか?」
「いいですよ、大丈夫です。……それより、秀一さん何か楽しそうですね」
「俺以外の男が隣に居るのを見せつけられて、愛しい人は酒で酔っていて。うい、帰って寝られると思うな」

そう言うとういの顔が一気に赤らむ。こちらに向いていた視線も段々と足元へと落ちていく。

「秀一さんの気の済むようにしてください。覚悟しておきます」

そのまま考えている事を口に出しているのはわかってはいるが、それが無意識に俺を煽っている事に彼女は気づいていないしわかっていない。気持ちアクセルを少し強めに踏み込んで家路へと走らせた。



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