「テレビで見るより断然綺麗ですね」
「喜んでもらえて何よりだ」

私の目の前には暗がりの中に光り輝く夜景がそこにあった。

数日前、秀一さんがお泊まりをしていく日の事だ。夕飯も食べ終え、ソファに座ってまったりと寛いでいた時に付けっぱなしのテレビから夜景が綺麗なデートスポット特集が始まった。何となくこういう所に秀一さんと行けたらいいなとは思ってはいたが。

「さっき連れていってもらったレストランでのディナーもとても嬉しかったですけど……。私、あの時そんな行きたそうにしていましたか?」
「ああ、かなりわかりやすかったぞ」

ディナーが終わった後、まだ連れて行きたい所があると言われ車に乗り込んだ。すると、段々とどこかで見た事がある様な景色が近づいてきたと思ったが。それにしても、行きたいなという気持ちが態度に出ていたのが少し気恥ずかしいな。

日常の些細な私の態度も覚えてくれている秀一さんは私にはもったいない人だと思ってしまう。それは彼の職業柄もあるとは思うが、それでも私を喜ばせたいと思ってくれていた事が何よりも嬉しくて。

視線を隣にいる秀一さんから夜景に戻す。やはり、何度見ても綺麗で。お礼を言わなくてはと再度視線を上げると、秀一さんの上着のポケットから着信音。携帯を取り出し、画面を確認すると「すまない、少し出てくる」と周りが静かな場所へと移動してしまった。

大体こういう日にかかってくる電話は急用を要するもので。寂しいけれど、秀一さんはFBIの最前線にいる人間なので、私ごときが邪魔をしてはいけないのだ。こうやって、私を気遣って楽しませてくれるだけで私は充分に満たされているから私は秀一さんと一緒にいたいと思うのだ。

遠くで電話に出ている秀一さんの後ろ姿を眺めていると来た時よりカップルが増えている事に気づいた。この間テレビで特集が組まれていた影響はかなり大きいのだろう。チラホラと人前でキスをしているカップルも少なくはない。どうもそういった光景に慣れていなくて、目のやり場に困ってしまう。後ろに向き直り、夜景に集中していると秀一さんが戻って来た。

必要以上に周りの事を恥ずかしがることもないのだが、何となく秀一さんの顔が見れなかった。きっと私の顔は赤くなっている様な気がして。視線は夜景をそのままに「呼び出しですか?」と聞くと、「仕事の確認だけだから大丈夫だ。……それより、何かあったか?」と聞かれてしまう。

観察力が良すぎる彼氏を持つのも少し困りものだ。隠し事が一切効かない。やはり顔は見れないまま「周りのカップルが人前でキスしてるの、すごいなって」と素直に口に出すと、秀一さんはそれを気にすることなく「日本ではあまり普通ではないか」と返ってくる。

「そういえば、秀一さん外国育ちでしたね」
「向こうでは当たり前だからな」

そう言う秀一さんはどちらかと言えば日本寄りな考えなのだろうか。私たちは外で恋人らしい事をあまりした事が無いのを思い出す。

「秀一さんって、その人前で恋人っぽい事するの苦手ですか?」
「あまり過度なものは好まないが。ういはしたいのか?」
「その、私もキスとかは……。手くらいは繋ぎたいかなって」

「それは気づけなくてすまない」と流れるような動作で私の右手を取って恋人繋ぎをした秀一さん。何で、こうも私が喜ぶ事をすぐにしてくれるのだろう。秀一さんの優しさが胸いっぱいに広がって体の中心がポカポカと暖かくなっていく。

「あっちに少し歩けるところがあったな」
「……行きたいです」

そう言うと優しく微笑んでくれた。大きな手が私の手を包み込んだまま私たちは光り輝く道へと歩き出した。

inspiration:TOY



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