呪術師、呪いの祓除を生業とするもの。呪詛師、呪いを嗾け私腹を肥やす、呪術師の敵対者。簡単に言ってしまえばそれは、正義と悪。そういう分け方をしてしまえば、私は悪の家系に産まれたのだろう。呪詛師と依頼者を結ぶ仲介役。その第三者に当たるのが私達だ。ママは小さい時、誰かに殺されてしまった。この業界は恨みしか産まないので、そう珍しくはない話だ。それからはパパと二人暮し。特にパパからはこの仕事を押し付けられることも無かったし、それどころか私に「ういは高専に通えば呪術師になれるがどうする?」と聞いてきたくらいで。そのパパもすでに殺されてしまっているのだが。今は、パパとよく一緒にお仕事をしていた韓国人の孔さんにお世話になっている。

別に呪術師に興味は無いので一般の高校に通う事を選んだ。それに、昔から周りにいたのは呪詛師の人達だったし、お金お金で育ってしまっている。なので、特に疑いもせずこの仕事に足を突っ込んだ。

「え? そんないきなり。別の日じゃダメ何ですか? えぇー、わかりましたよ。じゃあ、向かいます」
「何、うい行けなさそうなの?」
「ごめん、急用入っちゃった。また誘って」
「うん、わかったよ。また明日ね」

私も「また明日」と手を振って、校門前で友達と別れた。みんなと焼肉に行きたかったが、仕事となっては仕方ない。先程の電話は孔さんからで、すぐに来られるかという内容だった。どうやら会わせたい人がいるらしい。そもそも私は仲介業と言っても呪詛師達に案件を載せている闇サイトを運営しているだけの人間なので、表に顔は出していないのだ。それなのに、会わせたい人がいると言うことはそれなりの急用だと言うこと。指定されたお店に着いて孔さんの名前を出すと席へと通された。

そこには「こっちだ」と手招く孔さんと一人の男が座っていた。知ってる。口元の傷、筋肉で覆われている様な肉体。禅院甚爾だ。

「いきりなり悪かったな。まぁ、座れ」

鞄を背に置いて腰を掛けると店員さんが注文を取りに来た。適当に飲み物を頼んで、目の前の男に視線を戻すと面白そうに頬杖をついてきて、口を開く。

「うい、だったか? お前の親父には世話になったからな。今、いくつだ?」
「十七ですけど。孔さん、会わせたい人って禅院さんのこと?」
「そうだ。ういの親父さんの話になってそういや娘はどうしたって話になってな」
「はぁ・・・・・」

でも、禅院さんは天与呪縛により立ち回りがよく稼ぐ時は稼ぐ人だったはずだ。闇サイトの隅っこにでも禅院さんへの依頼枠でも作ればそれなりのお金になるかもしれない。そんな現金な考えが頭よぎる。・・・・・仲良くなっておいて損はないであろう人物。

「どうした? そんなにジロジロ見るな。あと婿入りしたから今は伏黒だ」
「すみません」

自分でも無意識の内に凝視し過ぎてしまっていたようだ。タイミング良く飲み物が運ばれてきて、誤魔化すようにストローに口をつける。しかし、婿入りという事は結婚しているのか。とても身を固めるような人物には見えない。人は見かけに寄らないな。

「それより、用事ってこれだけですか?」
「ああ」
「えー、マジかぁ。友達と焼肉行けたじゃん」

途中合流でもいいが何となくもう盛り上がってるところに入っていくのも気が引ける。・・・・・そうだ。

「孔さんも伏黒さんもこの後空いてます?」

二人ともまぁ、空いてるがといった反応を見せる。私は隣に座る孔さんの背中を軽く叩く。

「孔さんの奢りで焼肉行きましょ」
「いいな、行こうぜ」

そう言うなり、伏黒さんは早速立ち上がって店の出入口へと向かって行く。隣に視線を移すと孔さんは「おい、待てって」と慌てている。私はそれを無視して、机の上の伝票を手に「ここは私が持つんで」と伏黒さんの後を追った。



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