生意気だな。彼を眺めていてそう思った。

影山くんの才能は素人目から見ても抜きん出ていて、とにかくすごい力を秘めた人なんだろうなとわかる。本当に何気なく彼のバレーが気になっていただけなのに、いつの間にか恋心というものに変わっていった。

小学生の時とかは気軽にあの子が好きやら、遊び半分で言っていたが、これはハッキリ自覚していた。私は影山飛雄が好きだと。だからと言って特に何かアクションを起こそうとはしなかった。

及川さん達の代が卒業して、私はマネージャの取りまとめ役に任命された。少しだけ仕事量は増えたけど、選手へのサポートや記録、設備の管理。どれも大切な仕事でやりがいがあって、楽しんでいた。

そんな日々の中、影山くんの居残り練習に付き合うという習慣が出来た。いつだったかは覚えてはいないがその日は無性にアイスが食べたくなってコンビニに寄ったのだ。それも何となく次の日から続いて恒例化としていた。買っていたアイスがよくある当たり付きのもの。そこそこ買い続けているのに、当たらない。でもこんな小さな事でも影山くんと会話できる内容が増えるのは嬉しかった。

そして、その日もいつもの様にコンビニに寄ってアイスを買った。いつもと違ったのは影山くんもアイスを買った事。私のアイスが初めて当たった事。……影山くんからの突然の告白。

影山くんから好意を抱かれているのは正直わかっていなかったから、すごく驚いた。私も影山くんが好き。影山くんも私が好き。両想いほど、嬉しいことは無いはずなのに。どこか素直に喜べない自分がいた。それは、影山くんに近づきすぎたからだと思う。影山くんと付き合えても何か違うのではないのかと思うようにもなっていた。頭の隅で警告が瞬いている感覚が拭えない。けれど、影山くんの目が真っ直ぐこっちを見ていて本気なんだとわかる。それは、やはり嬉しくて、高揚感が上回って。

「私も影山くんの事好きだよ」

口をついて出てしまった。警告を無視した所で何が起きるのかなんてわからない。隣に並んだ影山くんを見てこの緊張して固まってしまった空気を解きたくて、「びっくりしたー」と声を上げる。小さな声で「すみません」と聞こえた。「謝らないでいいよ、嬉しい」そう言うと優しく微笑んでくれた。

それからは言葉通り楽しくて。でもやはりあの時無視した警告は段々と頭の中で大きくなっている。何となく自分の中でも警告の正体が何かをわかってきていた。それは、このままだと私も影山くんも傷ついてしまうよ、という警告で。けれども、たった今隣で楽しそうに笑ってくれている影山くんと別れるなんて考えたくはなかった。



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