俺が成人を迎えたと同時にもう一人産まれてしまった辰の物の怪憑き。原因は全くわからない。それに長い草摩の歴史の中でも始めての事で忌み嫌う者が多かった。産まれた子は女の子。なので、慊人とはとにかく相性が悪くて。そこから守ってやらないといけない両親は子どもを拒否してしまう側だった。

慊人はその子に対して他の十二支と会わせたがらなかった。特に俺には。それでも"猫"では無いものだから、仲間に入れてあげたらと楝派がうるさかったがそれを慊人が聞き入れる訳もなかった。

それから、七年。今、俺の前にもう一人の辰がいる。父親方の家系から産まれた子どもで、十二支。そして、両親は拒否。なんとなく俺にお守りのお鉢が回ってくるのではと予感はしていた。両親がどう慊人を説得したかはわからないが、俺の元に来たのをきっかけに更にういへ被害が及ばないのを願うばかりだ。

ピンクのワンピースを着ていて、俺を見上げる目は暗い影を落としている。後ろにいる両親は「よろしくね、はとりくん」とそれだけ言って、逃げるようにそこから立ち去って行った。取り残されたういは、どうしていいかわからないのだろう。ポツンとそこに黙って立ちつくしている。俺は目線を合わせるべくしゃがんだ。

「今日から一緒に暮らす草摩はとりだ」
「はとり、さん?」
「そうだ」

おいでと軽く手を広げて見せるが一向にこちらに来る気配が無い。立ち上がって一歩近づけば、後ずさってしまった。

「怖いか?」

首を横に振ったういは、小さい口を開いた。

「パパとママが男の人には近づいちゃダメって」

ういは他の十二支の存在も教えられないまま育ってきているのだろう。それと同時に両親は娘が動物に変身してしまうのを余程恐れていたのがわかる。少し体が震え気味のういを見て、改めて思う。草摩の一族は呪われている、と。

「大丈夫。俺もういと同じタツノオトシゴだ。同じように動物に変身してしまう男の人なら抱き合っても変身しない」

その言葉があまり理解出来ていないのか首を捻った。論より証拠。少しばかり強引に腕を引いて抱き寄せる。ういはありったけの力で抵抗をしてきたがそのまま包み込む様に抱きしめると大人しくなって、驚きながら俺と顔を見合わせる。

「だろ?」
「ほんとだ」
「うい、これからよろしくな」

まだどこか不安が混じる目を細めてういは、「よろしくお願いします」と言った。右手でういと手を繋いで、左手にういの持ってきた荷物を持つ。

「さぁ、ういの部屋に行こう」

俺の手を離さないようにときつく握られたその感触。せめてこれからういが少しでも悲しまない様にと優しく手を握り返した。



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