私の両親は2人とも黒の組織の研究員で、ジンは両親とよく連絡を取り合っていた同僚と言ったところだった。もちろん、ジンが組織の中でどういった立ち位置かはなんとなく理解していた。けれど、両親が捕まって上手いこと逃げ隠れた私が頼れるのはジンだけだった。両親が上手いこと匿ってくれた事もあり、元々一人暮らしだった私は自宅で組織からその一報を受けた。本当に1人になってしまった私は、頭ではわかっていたけど、心が追いつかずにわけがわからなくなってしまって、ジンにたくさん電話をかけまくってしまったのは覚えている。それと、こういう事は誰よりも嫌がりそうなジンがすぐに来てくれ、ジンなりに私のことを慰めてくれたのだ。

組織の事はよくわからない。両親は何も教えてはくれなかったけれども、"犯罪"をしている事は幼い頃からなんとなくわかっていた。捕まるのも必然だったのかもしれないが、今唯一の頼り口であるジンも同じリスクを抱えているのに、一緒にいてしまうのは母親と同じ血が流れているからなのだろうか。

ある夜、ジンに他のやつを探せとは言われたが、黒に染っていない人間にどう頼っていいかわからなかったので、私はジンにキスをしながら嫌だと子どもみたいにごねた。

今日だって、私の家に上がってきたジンはどこか鉄の匂いを漂わせている。仕事だから、と私の倫理観は両親が目の前からいなくなる前から闘っている。短く風呂借りると言ったジンの背中を見届けて、私はソファに座りクッションに顔を埋める。しばらくするとお湯の香りと共にジンが隣に座った。

「泣くくらいなら俺を部屋に上げるな」
「優しくしないで」
「なら、どうすればいい」

わからない。離れないといけないのは、わかってるけどジンと離れるなんてわかりたくはないのだ。

「もっと嫌な奴でいい」
「それは、彼氏に言う言葉ではないな」

優しく頭を撫でてくるジンはきっととても嫌な奴なのだろう。誰か離してくれる人がいても私は感謝を述べながらその人を手にかけてしまうのだろう。零れる涙が止まらない夜は長いから、また迷惑をかけてしまうと小さくごめんなさいと呟くのが精一杯だった。

title:サディスティックアップル



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