「じゃあ、奥で待ってて」
「はい。かしこまりました」

碧棺くんと再開した数日後、私は次のキャバクラの面接に来ていた。前と条件は変わらない所だし、後は働きやすければそれでいいのだ。事務所に通され、マネージャを待っている間。関係者の人が入ってきたのか事務所のドアが開いた。

一応、ここのお偉いさんだと今後働く時に気まずい感じになってしまうのは、避けたい。なので、立ち上がって「お疲れ様です」と挨拶をしようとする。しかし、すぐにちょっと前に見た顔がそこにあって、動きを止めてしまった。

「上杉?」
「碧棺くん」

引き攣った笑顔が戻らない。どうして彼がこんな所に。特に驚いてる素振りも見せない碧棺くんは、私の前に座った。私もつられて椅子に座り直す。

……碧棺くんがここのマネージャなのだろうか。でも、彼は確かヤクザだと聞いている。もしかして、碧棺くんの属している組のシマの店舗なのではという結論に行き着く。そうだとしたら、お店変えたいな。

下を向いてなるべく顔を合わせないようにする。すると、碧棺くんが「履歴書見てもいいか?」と聞いてきた。

「構わないよ」

なんとなく逆らいたくなくて、そう答える。ざっと目を通しながら碧棺くんは口を開いた。

「キャバ嬢やってたんだな」
「うん。まぁね」
「ふーん。……なぁ、ここで採用してもらう様に手筈整えてやるから俺専属で情報収集してくれねぇか?」
「え?」
「この店そこそこの大物来るし、報酬はちゃんと渡すし」

……ここで働いて、碧棺くんに情報を流せば別でお金が入ってくる。ただ、リスクが高いよなぁ。

「それさ、情報の元手がバレた場合私どうなるの?」
「そこは心配いらねぇよ。警察に伝があるし守ってやれる」

悪くない話じゃないかもしれない。碧棺くんが言う警察が本当かどうかわからないけれども。それにそういう事をするのも面白いかもと少し思っている自分もいる。

「うん。いいよ。ただ、本当に守ってね」
「わかったって」

そう言って面白そうなものを見つけた様に笑った顔が気に触る。けれども、そんな風にも笑うんだとその綺麗な顔に見とれてしまった。



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