*もし、紫呉が高校時代に夢主に手を出したら
*夢主は物の怪憑きで同じ高校設定に変えてます
*R15でかなり暗め。無理やり表現有

頭で何かが切れた音が聞こえた。もう、耐えられなかったと言っても許してはくれないと思う。

男女共学の学校だから仕方がないのだ。けれど、俺達は物の怪憑きで他の人達より倍気をつけて生活をしなければならないのに。僕自身もあまり気にしていないが、ういはそれ以上に気にしていないように見えた。これなら、周りにビクビク怯えてくれていた方が随分マシだ。

昼放課中の視界の端に映るうい狙いであろう男共。ういはそんな事知る由もなく、楽しそうに話をしている。別にこんな光景ありきたりなのだろう。けれども、"見せつけられてる"ように映ってしまうそれに、気分が悪くなる。その光景を見ないようにとあーやとはーさんとの会話に意識を戻した。

授業も全て終え、あーやとはーさんは、生徒会があるとの事で、ういと2人で帰宅をする事になったのだが。

「ういさん、今日話してたお店寄ってかない?」

話しかけてくる昼間の男。男女数名で出かけるようだが、ういが返事をする前に先に僕が口を開く。

「ごめんだけど、これから僕達家の用事があって早く帰らないと行けなくてね」

スラスラと出てくる嘘。けれど、あの草摩ともなればそれっぽくも聞こえるだろう。それならしょうがないね、また明日と楽しげに話しながら離れて行った。不思議そうな顔で僕を見てくるういには、どう返そうかどもってしまう。

「家の用事なんてあったっけ? 私何か忘れてたっけ」

そもそも早く帰らなければいけないのであれば、はーさんやあーやも帰らなければいけないという穴を自分で見つけてしまう。

「別にないよ。ういは周りを警戒しなさ過ぎ。どのタイミングでバレるかわからないっていうのに」
「紫呉がそんな事気にしてるなんて意外だ」
「もう、いいから帰ろう」

遊びに行きたかったなぁとボヤくういを隣に家へと帰宅すると、そういえばと今日出た宿題でわからないところがあるから教えて欲しいと言われたので、僕の部屋で勉強をする事になった。

部屋に訪れたういの格好は僕を男としてまるで意識していない、ショートパンツにTシャツとラフな格好。さっき声をかけてきた男達に見せたらあっという間に喰われてしまいそうだ。そんな事を考える僕もあいつらと大差は無いのだが。

簡単に飲み物とお菓子を準備して、勉強を始める。元々ういはそれほど頭は悪くないので、教科書を見ながら丁寧に教えるとすぐ理解し結構あっさりと宿題を終えた。残ったお菓子を摘みながらういが何か思い出したのか口を開いた。

「また、紫呉を紹介してっていう女の子がいたよ。もちろん私も知らない人だったから断ったけど相変わらずモテモテですねぇ」
「あーややはーさんだって人気じゃないか」

からかった口調で言ってくるうい。割とこういった事は多く僕は好意を持たれる事があまり好きではなかった。それよりもういに近づく男に嫉妬ばかり。

「私が近くにいるからって、私に頼もうとしないで欲しいよ。自分から声をかけてよって思っちゃう」
「そうだね。僕達に関わるならそれなりの覚悟をして欲しいよ」
「……私、好きな人が出来ても何も出来ないまま人生終わっちゃうのかなぁ」

そう宙を見ながら零したういに、思わず物の怪憑き同士ならいいの? と言ってしまった。

「それは、また違う問題が。私は慊人が怖いよ」
「そっか。ねぇ、うい。僕は慊人さんの事怖いと思わないよ」

腕を引っ張って無理やりこちらへ向かい合わせにする。きっとういはこれから僕が何を言わんとするかまるでわかっていないだろう。……どんな表情をするかな。……答えは知っているんだ。拒否だと言う事を。

「うい、好きだ」
「え?」
「ういの周りに僕以外の男がいるのが耐えられない」
「待って。何言ってるの? ちょっと急すぎて」
「わかってるよ。ういが僕に気が無いことくらい。ずっと見てるから」
「し、ぐれ……?」

そのまま後ろに押し倒して唇を塞いだ。ういのファーストキスがこんな形なってしまったのは、申し訳なく思うが今この状況のういだけは僕のものという事実に背筋がゾクゾクする。

ういは精一杯抵抗してくるが、男の力に適うはずもなく、またすぐに口を塞いだ。泣いているういの頬を優しく撫でる。

「紫呉、やめて」
「僕だってこんな形は望んでいなかったよ。……僕の事好きにはもうなれないよね」
「当たり前だよ。離して!」

耳元で嫌だねとハッキリ伝えると大きく見開かれた目。もう後戻りも出来ないし、すでに歪んでる日常が更に歪んだ日常に変わり、明日から始まってしまう。冷静に明日からどうしようなんて思いながらも、ういの肌を確かめる指を止めることは出来なかった。

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