*うっすらR18

「ねぇ、ういの中で1番優しい人って誰?」

臨也の突然の質問には慣れっ子だ。けれど、何でそんな事を突然聞いてくるのだろうと疑問はいつも拭えないのだけれど。

「どうしたの? 急にそんな事聞くなんて」
「別に。ただ誰なんだろうかって気になってただけ」

事務所の自分専用の椅子に座りながら、珈琲を飲んでいる臨也は、聞いてきたくせにすでに興味の無い様に手元の書類に目を通し始めた。けど、答えなかったら、何度も視線をこちらにやって、答えはまだかと催促をしてくるのだろう。面倒くさい人だ。私も臨也に視線を送るのを止めて飲みかけのアイスティーを飲む。隣に用意したバタークッキーも口に運び、サクサクとした食感を楽しみながら先程の臨也の質問を脳内で反復する。

優しい人、か。そもそも私の世界を構築している主要人物と言えば粟楠の四木さんと赤林さん、そして臨也の3人になるのだけど。元々引きこもりで人と関わりたくない私にとっては、この3人を相手するのも一苦労なのだけれども。……一苦労と思っている当たり優しい人はいなくはないか。そんな結論が出てしまい、臨也を横目に見ると目が合ってしまった。

「優しい人、いないです」
「もうちょっと考えてみてよ」

ほら、すでに返答が優しくない! どうやら、私の答えに納得出来なかった臨也は私の答えを受け取ってはくれなかった。とりあえず臨也は優しくない! とすると四木さんか赤林さん。四木さんはどちらかと言うと仕事で関わる事が多いから、そもそもプライベート的にどうかとはあまり知らない。となると残るは赤林さん。確かに女子供には優しい……。けれどあの人はベッドの上だととても凶暴なのだ。こっちの要望など知った事ではないと自分が満足するまでやり続けてくるしな……。やっぱり優しい人なんていないではないか。

「ごめん、やっぱりいない」

ふーん、とつまらなさ気に聞こえた声と共に立ち上がる音が聞こえた。靴下で歩くうっすら聞こえる足音が私の座っているソファの横で止まる。視線を上げると臨也の口元は薄く笑っているものの目の奥がまったく笑っていなくて、ほら優しくない。

「何? どうしたの?」
「ういには優しくしてるつもりだったのに、残念だなぁ」

私の制止も無視で私に覆いかぶさって深いキスをしようとして来るとことかどう優しさと捉えろというのだ。意味がわからない臨也の肩を押し返すがピクリとも動かなくて、酸素は吸えなくて苦しくなる一方。

殺されるんじゃないか。いつにも増して激しいキスに臨也の中で息をさせないほどのキスは優しさなのか。この人の優しさの基準値はぶっ壊れている。そう言ってやりたいが、臨也の優しさに呑まれて結局何も言えないまま、されるがまま流されてしまうのだ。



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