半年くらい上杉先輩に付き合ってもらっての練習期間が続いた。いつもの様に上杉先輩にボール出しをしてもらって、トス連などの練習を一通り終える。上杉先輩が体育館の戸締りをしている間に俺は着替えを済ませる。意外と家が近い事も判明して、帰り道が一緒で、この帰る時間が最近の楽しみでもあった。

今日も自主練を終え、着替えを済ませて、上杉先輩を待つために体育館前に移動する。日中は立っているだけで少し暑く感じる様になってきたこの頃だが、陽が沈みかけてくると少し肌寒くはなってくる。季節の変わり目をなんとなく感じながら、今日の練習を思い出し、1人反省会をしていると上杉先輩が校舎から現れた。

「お待たせ、帰ろうか」

隣に並び学校を出て、いつもの帰り道を進む。上杉先輩は今日の学校での出来事や好きなことをよく話してくれるので、ここ最近で随分と上杉先輩に詳しくなった。口下手でコミュニケーションが得意とは言えない俺にも上手く会話を回してくれて、普段口数が少ない俺も上杉先輩相手にはいろんな事を話していた。

道を進むと出てくるコンビニ。上杉先輩は、ここで当たりくじのある棒アイスのオレンジ味を買って食べながら帰るのが最近のお気に入りだ。俺も今日は気まぐれに同じ製品のソーダ味を購入した。コンビニから出ると外はまたさっきより暗くなっていて、街灯の明かりがつき始めている。ビニール袋を破って、よく凍っているアイスを口に運んだ。1口かじって、棒に書いてある文字を見つけたが、ハズレ。そう簡単に当たるものではないよな。横側からアイスにかじりつこうとした時だった。

「当たった!」

隣から上杉先輩の明るい声が響いた。見てと少し興奮気味になりながら、棒の先を見せられるとそこにはアタリの文字。ここ数週間毎日買い続けていた先輩は幼い子どもが欲しかったおもちゃをやっと買えてもらったというような無邪気で嬉しそうな顔をしている。アタリの棒アイスよりもどうしてもその楽しそうな顔に目がいってしまう。やった! とまた声を弾ませる上杉先輩とふと目が合った時だった。

「好きです、上杉先輩」

つい口から無意識に出てしまうとは、こういう事なのだろうか。自分でも今言った言葉をこの数秒の間に確認をしたのだ。俺、今告白した? 自身ですら状況把握出来ていないわけで、それ以上にいきなり後輩から告白をされている上杉先輩は俺以上に混乱させてしまっている。口から出てしまった言葉はもう戻らないんだ。上杉先輩が好きなのは事実なのだから言ってしまった以上責任を持って、最後まで終わらせよう。

「突然、すみません。けど、俺本当に上杉先輩の事が好きです」

上杉先輩の視線が真っ直ぐこちらを見ているのが、少し怖い。振られたらもうこうやって、自主練に付き合ってもらったり、一緒に帰ってアイスを食べる先輩を見る事も無くなるんだろうな。驚いて目を見開いている上杉先輩から目が逸らせないままそんな事を考える。

上杉先輩はアイスを食べ終えながら、ゆっくりと歩き出した。その後ろを着いていこうと俺も歩きだそうとした時だった。いきなり上杉先輩は振り向く。揺れる黒い綺麗な髪に思わず目を奪われた。

「私も影山くんの事好きだよ」

答えは俺の望む答えで、思わず緩みそうになる口元に力を入れた。上杉先輩の隣に並ぶと、上杉先輩はびっくりしたーと緊張の解けた声でそう言う。小さい声ですみませんと謝ると謝らないでいいよ、嬉しいと少し照れながらも笑った。ああ、こういう表情は今から俺しか見れないのだと思うと、これが優越感というものかと嬉しくなってしまう。

「これからよろしくお願いします」
「……こちらこそ」

急に自分の恋人になってくれた上杉先輩の隣を歩くけど、いつもと違う感覚にどんな会話をしていいかわからなかった。けれど、とても満たされた気持ちで今はこれで十分だと思ったのをよく覚えている。



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