「そういえば、上杉」
「ん?」

授業中の保健室周りは教室から離れた所にある為とても静かだ。私はベッドに横になりながら携帯をいじり、先生は珍しく仕事をしていた。

「最近休みの日でも、一緒にご飯行ったりするだろ」
「いつもごちそうになっています。高杉様」
「別に何も企んじゃいねぇよ。そういう事じゃなくてだな。服持ってねぇのか?」

この間先生とご飯言った時は黄色のワンピース。その前は、白のワンピース。その前の前は黄色のワンピース。確か一昨日は、黄色のワンピース。うわ、自分でも引くほど同じ服を着ている。普段制服で生活しているので、私服の必要性があまりなかったから、この2着しか持っていないのだ。

「私って、服に無頓着なんですね」
「今更……。少しは興味持てよ」
「だって、服なんてお金稼いでた時はすぐ脱がされるものーって認識でしたし」
「……荒んでんな」

服にお金かー。確かに最近出かけること多くなったし、増やしてもいいかな。今度空いてる時いつだっけ? と思っていると高杉先生が書類に目を通しながら口を開いた。

「買いに行くか」
「服の面倒まで見てもらわなくていいですよ」
「いいじゃねぇか。俺が買ってやりたいんだ」
「先生、私のこと娘だと思ってます?」
「いや。面白い着せ替え人形が出来たなと」

数日後の日曜日。高杉先生と買い物に出かける日。白のワンピースに着替えながら、クローゼットを眺める。制服がかかっている横に黄色のワンピース1枚という他に何も置かれていないのを見ていると結構余白が気になる。クローゼットを閉めて 、財布しか入らない小さな黒のチェーンバックを左肩にかけて、部屋を出て階段を降りていると母親に見つかった。

「うい、最近男でも出来たの?」
「んー、まぁ、そんなとこ」
「今度紹介しなさいよ」
「ママとパパが仲直りしたらね」
「そんなの無理よ」
「じゃあ、一生私の彼氏とは会えないね。いってきます」

家の前に停まっている見慣れた黒い車の中に白Tシャツの高杉先生を確認して、助手席に乗り込むとゆっくりと車が発進した。

「白か……」
「黄色がよかったですか?」
「いや、別に。ちょっと隣の県のアウトレット行くわ」
「わかりました」

車を走らせること1時間半。アウトレットモールに到着。吹き抜けの施設に3階建て。入口にある案内板を見てもブランドなどさっぱりわからないので、最上階から順繰りに見ていくことにした。エスカレーターで最上階へと移動する。

「最近の流行りって何ですかね」
「街歩いてると花柄が多い気がするが……」

いろいろと見て周り、数着気に入るものがあった。

「好きなもの選べ。遠慮すんな」
「では、お構いなく」

花柄のワンピ。シンプルなパンツにカットソー
。買ってもらってるうえに、当たり前の様に先生が荷物を持っている。女の人の扱い慣れてるなぁ。

「高杉さん。彼女いるのにこんな事してて怒られませんか?」
「……さぁな」
「私、知りませんからね」

ふと、目に入った小物屋の店頭に並んでいるシンプルなシルバーのネコのネックレス。ペアになっているようで、二匹のネコが向き合っている形になっている。可愛いなと眺めていると先生が後ろから覗き込んできた。

「欲しいのか?」
「いや、デザイン可愛いですけどペアネックレスですしねぇ」
「俺とお揃いでいいじゃねぇか」
「ほんと、彼女持ちの言葉じゃない。高杉さん、私に気がわりしてません?」
「……かもな」

冗談で言ったのに、なぜかそう呟いた高杉先生は、ネックレスをレジに持って行ってしまった。私は先生に遊ばれているだけ。本気にはしていない。これは、ただの契約上のお遊びだから。



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