この間のはとりさんのやりとりを思い出しては、これはやはり胸に秘めていないといけない想いだと気づかされてしまった。これなら、紫呉と遊んでいたほうがまだ気が楽だ。

ずっと床に伏していたので、久々に見た月は満月から少し欠けていた。少し前から月を見ていたら紫呉が来ていたのを思い出す。あの事がある前は来なくてもいいのにとか考えていたのに、今となってはどうしてこういう時に限って現れないのかと思ってしまう。なんて、都合がいい考えなのだろうか。

月から下へと視線を移すと人影が廊下を歩いているのが見えた。こんな時間に誰だろうと目を凝らして見るとはとりさんと慊人さんだった。なぜ、今1番見たくない現実を目の前で見せつけられなくてはいけないのか。いや、身を引けと言われているのか。そもそも慊人さんの監視下にある私がはとりさんに恋をするなんて無謀だったのだ。

背の低い影が背の高い影の背中に抱きついたのを見て静かに窓を閉めた。すぐに寝てしまって気持ちを切り替えようと振り返るとそこには望んでいた人物がそこにいた。

「泣きそうな顔してますけど、大丈夫ですか?」

いつもの着物姿に腕組みをしながらそこに立っていた。あまりにもはとりさんに夢中で紫呉がそこにいるのに気がつかなかくて、思わず体がびくりと反応してしまった。いつもここにいる時の紫呉は愉しそうに私をからかって遊んでくるのに、今日はどこか困ったように笑いながら座っている私の目線まで屈んで優しく頭を撫でられた。はとりさんとはまた違う掌にどこか物悲しくなってしまいついに涙がこぼれてしまった。

「本当に大丈夫ですか? まだ体調が」

紫呉に心配をされたくなくて、強がりのつもりで言葉を遮るようにキスをする。目を見開き驚いている紫呉の表情がおもしろくて、唇を離すと思わず笑ってしまった。

「びっくりした?」
「それはもう。……大丈夫じゃないみたいですね」

何かを見透かされているのだろうか。いつもならこのまま息もつけない様なキスが降ってくるのに、背中に大きな手が回ってきて大切なものを包み込むように抱き寄せられた。

「泣き止むまでここにいますよ」

その言葉に目の奥がさらに熱くなり涙が止まらなくなった。紫呉の普段は全く見せない優しさが胸に突き刺さりその晩私は縋るように泣き続けた。



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