少し前から何となしに、一緒にいる所を見かけるなとは思っていた。気にはとめていなかったが、これほど視界に、脳裏に焼き付いている事はそういう事なのだろう。

夜9時頃。慊人の相手をして部屋を出ると遠目にういの部屋に紫呉が入っていくのを見た。ほら、また無意識にういの居所を気にしている自分がいるのだ。紫呉はよくフラフラとしているヤツだからどこに居ようと不思議では無いのだが1度気にしてしまった相手に男が近づいているのは、心地よいものではない。それに紫呉というよく知る人物がういとよく一緒にいるなんてよくない事しか思いつかない。ういの体調を見にわざと覗きに行くという事は出来るかもしれないが、わざわざそこに水を差しにいくのもどうかと思い自室へと戻った。

別の日、一通りの仕事を終えて縁側で一服しようとしている所に紫呉がやって来た。いつも通りやぁ、はーさんとふざけた様に俺の隣に座った。隣で一方的に喋りだした紫呉を横目に頭に浮かぶのはういの事で、紫呉の話しが一段落した所で探りを入れてやろうと考えながら紫呉の話しを流し聞きしていた。

「って事があったのよ」
「本田くんは大変だな。……そういえば、紫呉」
「何だい?」
「ここ最近ういと一緒にいるのを見かけるが、ういも巻き込むつもりなのか?」
「……巻き込むも何もういなんて最初から渦中の人間の1人じゃない。何を今更」

確かに紫呉の言う通りだった。それに、察しのいい紫呉だから何かを勘づいたように、口の端を上げてニヤニヤと笑いだした。この男の性格はよくわかっていたはずなのに、自ら墓穴を掘ってしまった。これでは、紫呉に嫉妬しているかのようだ。

「そう……だな」
「その様子だとまだ聞きたいことあるんじゃないんですか?」
「いや、もういい」

紫呉に対して嫉妬しているのを認めるのは悔しくて。それならば黙秘権を使わせてもらおうじゃないか。それに知られた所で何かが急に始まるわけでもないのだ。隣でまぁ、頑張ってよと立ち上がり、そろそろ帰るよと家を出て行った。

それに今、紫呉を問い詰めても、ういに近づいてもいい事など1つもない。それならば、総てが終わるまで俺はこの気持ちを隠し通す事でういを守ると決めたのだ。

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