今日は朝から雨で一日中体が気だるかった。目を覚ますとすでに辺りは真っ暗で時間を確認すると22時と夕飯の時間はとっくに過ぎていた。夕飯は要らないと言ってしまったが、お腹は空いている。何か余り物でもあるだろうと体を起こすとまだ体のだるさは残っていた。外から雨の音が聞こえるのでまだ今日中には止みそうにないなと思いながら階段を降りると、どこかの窓が開いているのか雨の音が先程より強く聞こえる。

窓が開いていたら閉めておかないと朝には床が水浸しになってしまうと雨音が強く聞こえる縁側に向かうと障子が開いたまま紫呉がボーッと強く叩きつける雨を見上げていた。俺の気配に気づいたのか後ろを振り返った紫呉は体調はどうですか? とわかりきったことを聞いてきた。ダルいに決まってんだろと返しながら、冷蔵庫を開けると夾くんへと手書きで書かれたメモと今日の夕飯であったであろう煮物が置かれていた。透の優しさに口元が緩みそうになったが、紫呉に見られたくなかったので口元を押さえながら電子レンジへと煮物を入れた。温める間の暇潰しだと紫呉に何をしているのかと声をかけた。

「こんな雨の日に何してんだ?」
「月を見てるんです」

……返す言葉が見つからなかったので、温め終わった煮物を取り出し、箸と飲み物を準備して食卓へと座る。こんな雨の日に月を見ていると答えられたらただのアホだとしか思えない。

「質問をしておいて無視をするのは酷くないですか?」
「月を見てるって言われてもな。月なんか出てねぇじゃねぇか」
「心の綺麗な人には見えるんですよ。そうですねぇ、例えばういも同じ事を言うと思いますよ」

紫呉からういという名前を聞くだけで、箸を止めてしまった俺はどこまであの事を気にしているのか。俺には関係の無いことなのだから放っておけばいいものの。

「ういは月を見るのが好きなんですよ。今日の月は1日中出てるって言ってなぁ。……そういえば夾くん、僕に聞きたいことがあるのでは?」

その言葉で俺がいる事を知ってういにキスをしたのが確信犯なのはわかったので、また何も答える気にはなれなかった。答えを知りながら会話を続けてもからかわれるだけだ。残りの煮物をかきこんで、さっさと皿を洗って自分の部屋に戻ろう。紫呉との会話で元より重い体が更に重いように感じながら腰を上げる。

「夾くん、さっきから無視ばっかしてやっぱり酷いよぉ」

甲高い猫なで声に更に嫌気がさす。わかっててやっている紫呉の方がよっぽど酷いのではないのか。

「別に。紫呉から聞きたいことはねぇよ。……ういから聞いた」
「そうですか。君たち、猫は何だかんだで仲が良いんですねぇ」

やっぱり紫呉の言葉に返す気力が湧かなくてもう部屋戻るわと一言残し自分の部屋へと戻った。何となく窓から月を探してしまった俺は相当疲れているのだろうとまたベッドに横になって眠りについた。



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