R15

夜になると眠りたくなくなってしまう。そんな私の暇潰しは囲われた殺風景な部屋にある窓から見える月だ。いつもの様に窓を開けて月を眺めていると襖が開いた。こんな時間に私の元へやって来る人物はただ1人。

「本当に月が好きですねぇ」

そう言いながら近づいてくる声を無視していると冷えますよと後ろから優しく抱きしめられる。止めてと身じろいでも止めてくれる人ではない事はわかってはいるけど、多少の意思表示はしておかないと余計に良いように使われてしまうのは目に見えているから。

「もっと抵抗しておいた方がいいんじゃない?」
「この間素直に従ったら無理矢理押し倒して来たのはどこのどなただったかなぁ」

ほとんど犯されたに近いあの日を思い出して心臓が跳ねる。無茶苦茶に抱かれて最終的に泣いてしまった私に多少たじろいでいた紫呉もおもしろかったのだけれども。バツの悪そうにその節はすみませんねとゆっくりと布団に押し倒された。有無も言わさずに近づいてくる顔を肩を押し返して止める。

「そんな事言いながらするの?」
「え? しないんですか?」

とぼけるのは紫呉の十八番だ。ごめんと謝りながら尚も求めてくる男がいるのか。他に男を知らないから何とも言えないがこの男がズレていることくらいはわかる。

「しないよ」
「そう言われましてもねぇ」

肩に置いていた手を掴まれてあっという間に顔の横に押さえつけられてしまう。それと同時に重なる唇。無理矢理口をこじ開けられてあっという間に舌の侵入を許してしまった。満足するまで終わらないキスに段々と呼吸が荒くなっていく。離れていった唇をなんとなく見つめていると服の裾から冷たい手が入ってくる。暖かい肌に滑る冷たい指先に反応してしまうと好きなくせにと耳元囁かれれば、もう逃げ場はどこにも無かった。

開けっ放しの窓から見える月はすでに見えなくなりそうになっていて、月にすら見放されるのかと寂しくなり紫呉を求め始めてしまう私はとても弱い存在だと自覚するのだ。



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