待合室で待っているとパトカーのサイレンが病院に響き渡った。外に出て見てみるとパトカーには降谷さんが乗っていた。おじさんはまだ警察にいるのか姿は見えなかった。ちゃんと確証が取れたのかこの事件については終わりを正しく迎えられる事に胸を撫で下ろす。

降谷さんに見つからないように野次馬に紛れて中田と相田が連行される所を傍観していたが、どこか相田に接触できる時はないかと機会を伺っていると先に中田への取り調べが始まった。相田は、見張りがいるものの今しかチャンスは無いと降谷さんがいる場所を確認しつつ相田に近づいた。

「お嬢ちゃん、ここは危ないから離れてもらっていいかな?」
「私、公安の降谷零の協力者です。相田さんに先に聞いて欲しい事があると言われて聞きに来ました」

こんな安っぽい嘘では無理かと諦め半分だったが、降谷さんの……と呟いたあとにわかりましたと相田と話しをさせてもらえることになった。降谷さん、本当にすごい人なんだな。

「何だ?」

相田は言わずともかなり機嫌が悪く少しでも刺激すると暴れだしそうな雰囲気を纏っていた。けれど、今はそんな事に構ってられないのだ。

「組織にいるバーボンを知っていますか?」

最初は話したく無さげに私を見ていたが、見張りの警官も降谷さんの命令と受け取っているのかおい、話せと促してくれた。

「……姿は見た事ないけど聞いた話し、確か褐色肌の金髪の奴だろ? あそこにいる警官みたいな出で立ちなんじゃないか? 上からの指示で研究員を探す仕事でもしてた様だな」
「それ、本当ですか?」
「ああ。俺がその筋の仕事を請け負ってたからな」
「わかりました」

見張っていた警官にありがとうございますとお礼を言い、一度喫茶店に戻ろうとしたが後ろから腕を掴まれた。振り返らなくても誰かなんてわかる。

「バーボン? って言うんだ」
「俺の事調べたのか?」
「降谷さんが父さんの事に関わってるなんて知りたくなかったなぁ」
「その話は後だ。何で勝手に通報した?」
「教えたくないです。結果的に2人とも捕まったから問題ないじゃないですか。もう、あなたと関わりたくないので、それじゃ」

腕を振り払おうとしたけど、それ以上の力で引き止められてしまった。本当にもう用はないのに。

「確かに結果は良かったかもしれないが、俺とういの問題は解決してないんじゃないか?」
「父さんの事件止められなかった降谷さんに用なんてないんですよ。私がその娘だってわかってたんですよね! よく仕事の依頼なんて出来ましたね」
「俺も酷かったかもしれない。けれど、組織を潰すには小さいことも見逃せない。それは、ういもわかってるんじゃないか?」

そんな事はわかっているが、怒りは収まらなくて無理やり掴まれていた手を振り払った。

「だからって、こんな利用される様な事して欲しくなかったです。終わった事かもしれないですけど、降谷さんなら事件止められたんじゃないんですか!」
「あの後、その件から俺は外されてたんだ。まさか本当にういの父親に目星をつけているなんて思わなかったんだ。俺が謝ってもういは納得しないだろう」

その通りだ。降谷さんは直接どうなっていたかは知らなくて、勝手にどうにかしてくれれば良かったのにと思っているのは私で。そう、勝手なのは私。

「その通りです。もう仕事の依頼もこれからの協力も無しでお願いします」

目の前で降谷さんの連絡先を消して、今回は勝手に通報してすみませんでしたと一言、仕事として受けていたこの件に関しては情報屋として謝った。降谷さんは何も言わずに私を見ていたが、他の警官に呼ばれて行ってしまった。私はまた喫茶店に戻ろうと踵を返した。視界が歪んでいるのなんて、気にしない。周りの視線が少し痛いのも、気にしない。やり場のない怒りは瞳から溢れてきて止まらなかった。



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