*高校生設定。日吉1年生。

相変わらずテニス、テニスの毎日。けれど、俺の一言がきっかけで世界は一変した。中学時代から今もテニス部のマネージャーをしてくれていて、跡部さんの幼なじみの上杉先輩。ずっと好きでたまらなくて、つい先日帰りが一緒になったんだ。

「日吉! 今帰り?」
「ええ」
「駅まで一緒に行こう?」
「いいですよ」

駅までの帰り道。テニスの話や跡部さんの少し恥ずかしい話。そんないつもの様な会話。駅に着き、改札を通ろうとする先輩の腕を咄嗟に掴んだ。突然の事に驚きながら、どうした? と聞いてくる先輩にいっぱいいっぱいの気持ちでもう少し話しませんか? と言うと、先輩は快くいいよと言ってくれて近くの公園に移動した。

「公園なんて久々にきたなー。けど、人いないね?」
「そ、そうですね」
「どうした? 日吉。さっきから様子おかしいけど体調悪い?」
「いや、大丈夫です」

心配そうに覗き込んでくる先輩が可愛くてそれどころではない。自分の感情なのに自分のもので無いようなモヤモヤがどこか嬉しくも鬱陶しくもある。ベンチ、座ろうかと手を引っ張られ2人で腰をかけた。2人きりになれるチャンスなんてほとんどない。勇気を出して作り上げたこの状況を無駄にする訳にはいかないと自然と握った手に力が入る。

「あの、先輩」
「ん?」
「好き、です」

言えた。怖くて先輩の顔が見れない。どんな表情をしているのだろうか。明日から部活で会う時気まずくなってしまうのではないだろうか。優しい先輩はそれに気遣ってしまうのだろうか。嫌な考えがぐるぐるする。

「私も、日吉が好きだよ」

小さい声ながらもしっかりと聞こえたその声。
ほんとですか? といつもより大きな声を出してしまった。横を見ると先輩は俺よりも真っ赤な顔をして俯いていた。

「先輩、顔真っ赤」
「日吉もだよ」

そんな感じで付き合い始めた先輩とももう半年。俺は初めての彼女で年上でどうしたらいいのか悩む時もあるけど、先輩はそんな事気にもしないで自然体でいてくれるのがとても嬉しく思う。

ただ、ひとつ

「で、その時景吾がさぁ」

必ずと言ってもいいほど出てくる跡部さんの話。今は俺といるのにという嫉妬心と戦っていた。

俺の家でお家デート。ただ、テストも近いので勉強を時々しながらのんびりとしていた。先輩は数学が苦手でさすがに俺も勉強は怠ってはいないもののひとつ上の数学はわからないが、答えと解説を見ながらこうじゃないですか? など一緒に考えたりしていた時だった。

「景吾、暇かな? テレ電してみようかな」

その一言がとてつもなく頭にきてしまった。

「いいんじゃないんですか?」

自分でも驚くほどの冷ややかな声。先輩にも伝わったのか、固まった表情になっている。

「何か、怒った?」
「怒ってませんよ。早く電話でも何でもすればいいじゃないですか」
「お、怒ってるじゃん! いきなりどうしたの?」

鈍い先輩にイライラが募っていく一方で。けれど、先輩の目に涙がジワジワと溜まっていくのが見えて急に泣かせてしまったと焦りが生じる。

「先輩がいつも跡部さんを頼ってるのが嫌なんです。俺が彼氏なのに、俺が隣にいるのにっていつもいつも思ってしまって」

嫌な嫉妬心。俺が大人になれば済む話なのだろうけど、それでも嫌なものは嫌なのだ。ハッとした先輩の眉がへの字に曲がる。

「ごめん、嫌な思いさせてたんだね。ごめんね」
「わかってくれたらいいんです。俺も急にすみません」

ううんと首を横に振って気をつけるねと言った先輩はホッとしたのか溜めていた涙を流した。

「泣かないでくださいよ」
「怒った日吉が怖くて」
「俺を怒らせた先輩が悪いんです」
「意地悪」

ゆっくりと抱きついてきた先輩に俺も背中に腕を回して子どもをあやす様に背中をさすった。

「もうあまり嫉妬させるようなことはしないでください」
「わかりました」

これからは何でもちゃんと思ってる事を話そう。先輩の泣き顔はあまりにも心臓に悪すぎることを学んだから。

title:サディスティックアップル



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