降谷さんに頼まれ言われた病院にやってきた。手掛かりが何も無いから、その組織の人間が病院に通っているのか、入院をしているのかわからない。……父さんに近づいた奴は通っていたな。通っているとなると探し出すのにはかなり骨が折れそうだ。

検査で病院内を回っている風を装いながら、すれ違う患者1人1人を注意深く観察していると運のいい事に1人怪しい奴を見つけた。入院患者の様で怪しげに病院の入口でウロウロしながら、外に出ていった。それに着いて行くと、煙草を吸っている入院患者と医者が何かを話していた。物陰に隠れながら会話内容を聞き取ろうと息を潜めた。

「じゃあ、今回の報酬分で」
「ここの病院だと簡単に薬が手に入るから助かりますわ」

薬とお金の取引現場。さり気なく写メを何枚か撮り、そこを後にした。父さんはすぐに通報をして組織にそれがバレて殺された。今の奴はお金をもらってのうのうと生きている。頭に血が上るのを覚えながら、喫茶店へと向かった。

店に入っていつもの定位置に座るとホットココアとトーストが注文をしなくても出てくる。マスターにありがとうございますとお礼を言って、トーストを食べながら降谷さんに連絡を入れた。今からなら時間があるとの事なので、少し待っていると扉が開く音がした。マスターに注文を聞かれていたけど、すぐに出ると答えていたので忙しいのだろう。

「やっぱり仕事が早いな」
「手掛かりが無い中で運が良かったと思いますよ。写真は撮ってきました。私はこれ以上手出しはしない方がいいと判断したので、とりあえず現状報告はしておこうと。2人の名前はわかってます」

渡した写真を1枚1枚見ながら、目つきが変わっていく降谷さん。心当たりがある人物なのだろうか。

「……取引されてる薬の名前が知りたいな。そこからルートを辿れば何かわかるかもしれない」
「と、言う事は医者に近づくのが早いですね。確か父さんの事をよく知ってる人がそこで働いているので、その人に協力をしてもらえないか聞いてみます」
「それじゃあ、頼んだよ」
「あっ、降谷さん」

足早に帰ろうとする降谷さんを呼び止める。携帯を構え、振り返った瞬間の写メを撮った。公安がバックにいる証明が欲しくてと言うとあまり悪用するなよと店を出て行った。

父さんの知り合いの連絡先がわからないので、夜に終わりであろう時間を狙って裏口で待っているとその人は現れた。

「ういちゃんかい?」
「お久しぶりです。ちょっと話したいことがあるんですけど、時間いいですか?」

いいよ! それより元気だったかい? と気のいいおじさんとファミレスに入り、適当に注文をして今、私が情報屋をしている事を説明した。

「父親の事件の事調べてるのかい?」
「そうなんです。それで今おじさんが務めてる病院の中田っていう人、わかりますか?」
「それなら同期でよく知ってるよ」
「最近その人に関して不審な事や噂、何か聞いていませんか?」

頼んだものが運ばれてきて、テーブルに備えてあるスプーンを取りながらおじさんはそうだなぁと口を開いた。

「中田に関してはわからないけど、最近中田の循環器科でよく薬の数が合わないって言うのは聞くなぁ。ちょっとした話題にはなってるよ」
「その合わない数の薬が何か調べられたりしますか?」
「ちょっと難しいけど、君のお父さんには世話になったからねぇ。やるだけやってみるよ。あまり期待はしないでね」
「ありがとうございます。それと、もうひとつその中田と繋がってるらしい入院患者の相田孝道って人の詳細が欲しいですけど」
「さすがに患者さんの個人情報は……」

早速役に立つじゃないと降谷さんの写メを出しながら、彼が公安である事で今一緒にこの件を捜査していることを伝えた。

「じゃあ、何かあったらその人の名前を出せばいいんだね。それにしてもその人公安の人だったんだねぇ」

写メを見るおじさんの顔が意外という顔つきに変わる。一体どういう事なのだろう。

「おじさん。顔知ってるの?」
「うん。何度かういちゃんのお父さんの病院で見かけた事あるよ。外見が結構特徴的だったから覚えててね」
「え?」
「それなら安心して俺も動けるね。これ俺の連絡先だから薬の名前と患者さんの個人情報がわかったら、連絡するよ」

食べ終えたおじさんは伝票を持って、じゃあ、先に出るねとレジに行ってしまった。降谷さんが父さんの事を知っているということなのか? しかもおじさんが警察である事を知らなかった。おじさんが何度も見かけて覚えているくらいなのだから、父さんは降谷さんに目をつけられていたのか? けれど、それならすぐに警察である事を明かして事件は防げていたのでは。降谷さんは私がその医者の娘である事を知っているのか。色んな疑惑が頭を駆け巡る。……どうやら、降谷さん自体も調べてみる必要がありそうだと遅れて運ばれてきたデザートを食べながらどこから調べようかを考えるのだ。



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -