目立たない路地裏の喫茶店がういの根城らしくそこに呼び出された。一週間半欲しいと言っていた割には一週間も経たずに連絡が来たので仕事が早くてかなり優秀なのだろう。言われた通りの喫茶店に着くと、俺が何者かわかっている様な雰囲気のマスターにういちゃんは奥の個室ですよ、飲み物はいかがなさいますか? と聞かれた。ホットコーヒーを注文して奥に進むとういは生クリームたっぷりのホットココアにトーストを頬張っていた。向かいに座るとおしぼりで手を拭いて、鞄の中からA4の茶封筒を出てきた。

「随分、早く終わったな」
「これに近い仕事ばっかりしてますしね」

コーヒーが運ばれてきて、マスターにごゆっくりと言われる。コーヒーを飲み、手渡された封筒の中を確認する。読み進めると俺が知っている赤井の情報がきっちりと書き込まれている。組織の事について書いてある辺り合格点だろう。

「うん。ありがとう。焼肉だっけか?」
「それ、依頼じゃなくてテストか何かでしょ? 本当の依頼は?」
「何でわかった?」
「だって、何も反応無いもん。大抵の人にはもっと相手を憎む様な"殺意"ってのをどこかしらに見せるけど、降谷さんはそこまで感じなかったし、だから試されてるのかなぁって」

テスト勉強は早目に終わらせるタイプなのでと続けるういは悪戯げに笑った。話しが早くて助かる。

「本題はここに出てきた組織の事だ」

途端にういの顔が笑顔から真剣な顔つきに変わった。仕事モードというよりさっきういが言った"殺意"に似たようなものを感じる。そこには俺を威圧する勢いがあった。

「降谷さんも組織について調べてるんですか?」
「あっ、ああ。今の主な仕事のひとつだけど。それで協力を」
「お金は要らない。協力する。私も組織の事を追ってるんだけどさすがに限界があって。公安の人が力になってくれるならこんな心強い事はないからね」

やたらに食いつきがいいういの反応が気になった。どこかで組織に関わった事があるのだろうか。で、手始めに何をすればいい? と聞かれとある病院に組織の人間がいるから探って欲しいと頼むと小さく病院ねぇと呟いた。

「何かあるのか?」
「いや、私の父さんと一緒の末路にはしたくないなって」
「もしかして、組織に……?」
「正解。誰が父さんに目をつけたか知らないけど普通に暮らしてる人を狙わないで欲しいよねぇ」

了解。病院ね、詳しくはまた携帯に送っておいてくださいと喫茶店を出て行った。俺は飲みかけのコーヒーを飲みながらちょっと前にどこかの病院に世話になってた組織の人間にそこの医者へ研究員の話しを持ちかけてみてはと漏らした事を思い出していた。

「まさか、その医者の娘……」

けれど、俺は実際に指示をしていた訳ではないが、それでも一部始終を知っている俺は彼女からした加害者ではないか。そんな事をグルグル考えていても、終わってしまった事。ういが何かを勘づいてしまったら、ういとはそこまでだと思い直して、店を後にした。



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