やはりその日は一緒の家に居られる自信が無くて、友達に連絡をして家に泊めてもらった。少し家を出るのを躊躇いながらも、意を決して玄関の扉を開けた。友達の家に着くと泣いているにも関わらず、何も聞かずに大丈夫だよと泊めてくれた。

朝、友達が少し怯えた様子で私を起こしにきた。あまりよく眠れなかったからすぐに頭は覚醒したが、驚きのあまり声は出なかった。友達の後ろにいた碧君は静かに迎えに来たぞと言った。

荷物をまとめられて、車に乗せられた。呆然としている私の代わりに碧君が友達に邪魔したなと挨拶していた。友達は心配そうに私を見ていたけど、碧君の雰囲気に手出しはとても出来ない様だった。

車中は終始無言のままで、家に連れ戻されてしまった。どうやって、友達の家を探し当てたのだろう。そもそも友達の家などいちいち把握してるものなのだろうか。そこまで考えて碧君が本気でおかしいのではと疑い始めてしまいそこで思考を停止させた。

玄関先まで連れてこられたけれども、靴を脱いであがる気にはなれなかった。碧君はただそれを見ているだけで行動は何もしてこない。俯いたままの私に碧君は優しい声色でこう言った。

「もうどこにも行くな。ずっとここにいろ」
「あお、くん……」
「いや、か?」

いつかよく聞かれていた質問。私は嫌なのだろうか。例え、ここで嫌と答えたら碧君はどうするのだろう。それを試す勇気はもう私には残っていなかっただけの話しなのだ。

首を横に振った私に満足したのか、おかえりと普段の調子で響く声とガチャリと音をたててかかった鍵の音が重く私にのしかかった。



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