何となく上司が姿を消したのは、碧君が何かをしたからでは無いのかという疑問が抜けずにいたけど、確信が無さすぎるので自分からは聞けずにいた。

夜ご飯も食べ終わり2人でテレビを見ながら何気ない時を過ごしている時だった。碧君がそういえばと口を開いた。

「最近、残業また無くなったな。顔色が良くなった」
「うん。忙しい時期も終わったしね。……ねぇ、碧君」
「何だ?」
「やっぱり何でもない」

そう言って飲み物を取りに立ち上がろうとしたら碧君に腕を引っ張られて、ソファに座り直されてしまった。両肩を掴まれて、強制的に向かい合わせにさせられてしまう。顔がまともに見れない……

「何だよ。気になるだろ」
「えっとね、言ってた男性社員の上司が辞めたの」

碧君の反応は何も無い。別に碧君は関わっていないのだろうか。少し警戒心を解いて冗談交じりに、碧君が関わってたりしてねと笑うと俺が関わってたら? と言われた。碧君の表情は変わらず真顔のままでとても、怖い。

「関わってたら、そうだなぁ。ちょっとやり過ぎだったんじゃないかなぁって。……違う、よね?」
「ういがそう思いたいならそう思えばいい。どちらにしろあそこは火貂組の傘下みたいな会社だしな。どうとでもなる」

今、火貂組の傘下って。聞き間違いじゃないはずだ。でも、ちゃんと自分で決めた会社だしたまたまそうだったとしか。

「ういちゃんが不思議そうな顔してるから教えておくけど、そこの会社に決まった時に根回しをしてたからな」
「……碧君、さっきから何言って……」

肩を掴まれている手に力が込められて痛い。

「心配なんだよ。ういが。なぁ、もう全部捨てて俺のそばにいてくれ」
「あ、碧君? ちょっと落ち着こう」

碧君の手から逃げようと身を捩ると背中に手を回されキツくキツく抱きしめられた。

「俺はいつだって冷静だ」
「さすがの私でもちょっと混乱するよ。私、今日友達の家に……」
「ごめん……」

そう言って急に離れた碧君は力なさげにリビングを出て行った。きっとあれが碧君の本心なんだ。私はあれ程に重い愛を受け入れられはしない。けれど、ずっと碧君と一緒にいたから離れようにも離れられないとこまで来てしまったのかもしれない。



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -