*強い左馬刻はいないです

夢を見る。母親が親父を殺して、母親が自殺をして。妹と離れることになって、仲間も失って。ここまでは事実だ。けれど、胸糞悪いのがここから。MTCの奴らも火貂組の奴らもういもいなくなっていく夢。

ういがさよならと背中を向けるところでいつも目が覚めて、隣で眠るういを確認して安心をするというのが最近の流れだ。

流れだったのに。いつもの様に背を向けたういを追いかけて目が覚めた。けれど、現実のういは隣にはいなかった。慌てて飛び起き寝室を出るとリビングに明かりがついているのを見て胸を撫で下した。静かにリビングの扉を開けるとういは食卓の椅子に座って体が冷えないように上に青のカーディガンを羽織ってホットミルクを飲んでいた。その光景に全身の力が抜けた。

「左馬刻くん? どうしたの? 左馬刻くんも寝られないの? 私も今日どうしても寝つけなくてさ」

いつもの明るいお喋りなういを見て、ちゃんとここにいると確認をして、ういの頭をグシャグシャに撫でると髪を直しながら何なのもうと怒り出す。

「何でそんな嬉しそうなの。意地悪な人には美味しいホットミルクいれてやんないんだから」
「何かうい見てたら安心した。ういちゃん、謝るからホットミルク作ってくれよ」

俺の言っている意味がわからないと言った顔をしていたけどしょうがないなぁと立ち上がり俺専用のマグカップに牛乳を注いで温め始める。電子レンジの動く何気ない音にでさえ安心をしてしまう俺は最近疲れ気味なのだろうか。

「疲れすぎは良くないよ。左馬刻くん」

何も言わなくてもきっとういには何かを勘づかれているのだろうか。具体的に言葉にはしないその優しさに俺は甘え続けるのだろう。



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