学校の実習が長引いてしまい、帰りが遅くなってしまった。と言っても時間的にはまだ20時だ。だけど疲れてしまったし、自炊をするのも面倒だなぁっと思っていたら男の先輩に上杉ちゃん、良かったらご飯食べて帰らない? となって、近くのファミレスでご飯を食べに行く事になった。

碧君の顔が頭を過ぎったけど、まだ日付が変わる時間でも無いし、最近は仕事が忙しくて顔を合わせていない。お酒を呑みに行って遅くなるわけではないし、こんな事で邪魔をしてはいけないと碧君への連絡はせずにいた。

楽しくおしゃべりをしながらご飯を済ませて、2人で駅前へ。すると見慣れたアロハの碧君が駅前にいた。連絡をしなかっただけなのに、どこか罪悪感が込み上げてきて、なんとか見つからない様にと思ったが先輩が大きな声で上杉ちゃんと呼びかけてしまった。

「大丈夫? なんかいきなり顔色悪いけど」
「大丈夫だよ……」

私は。こちらに気づいてしまった碧君は見たことも無いような不機嫌さで先輩の胸ぐらを掴んだ。とても割って入れるような雰囲気では無くて、私には謝ることしか出来なかった。

「碧君、ごめん。私が連絡入れなかったから怒ってるんだよね。ごめんね、だから先輩を離して」
「何、ういに勝手に近づいてんだよ」

先輩は碧君の剣幕に何も抵抗出来ずにいた。どうしようかと思っていると二度とういに近づくなと先輩から手を離した碧君は私の手をとって、車に乗せられた。

「碧君、先輩は何も悪くないよ」
「悪くなくても俺は許せねぇんだよ」

車はそのまま発進して、どこに行くの? と聞くと俺の家と短く答えられそれ以上何も聞く気にはなれなかった。お互い無言のまま碧君の家に着いて玄関の扉が開く。けど、いつもと様子の違う碧君が怖くて私は玄関を上がる気になれずに、その場で立ち尽くしてしまった。心配そうにうい? と振り返った碧君は、ゆっくりでいいからとその場で私を待っていた。……逃げてもいいのだろうか。逃げてもきっと、碧君は追いかけて来てしまうかもしれない。でも、碧君と今何を話せばいいのかわからないなど混乱しながらも、靴を脱いで上がってしまったのは、自分の意思でもあるのだ。ソファに座れと言われるがままに座ると後ろから碧君に抱きしめられた。

「やっぱりあの野郎に何かされたか?」
「何も、ないよ」
「そうか。なぁ、うい」
「なに?」
「好きだ、ういの事が。もう我慢出来ねぇ」

縋るような碧君の声に驚いてしまい身動きが取れなくなってしまった。ここで私が突き放したら碧君はどうなってしまうのだろう。

「わたしも、碧君のこと好きだよ」
「そうか、よかった」

体を反転させられ、重なった唇。先程までの怖い碧君はどこにもいなくて、いつもの優しい碧君がそこにいた。返事をしてしまった。けれど、きっと今の生活と何ら変わりは無いだろう。そんな甘い考え。終わらないキスの中、何も考えられなくなってく頭でそんな事をなんとなく思っていた。



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