*現パロ。社会人設定。R15気味

「好きだ」

そう言って果て、ゴムの処理をしている晋助さんの背中をボーッと見つめる。その後、私の身体も優しく拭いてくれて。幸せな時間。そう、幸せなの。処理が終わって、抱き合っているこの時間も好き。そんな優しい時間に響く晋助さんの携帯。片腕だけを伸ばして、サイドテーブルの携帯を確認してすぐに置いた。暫くして、音は鳴りやみまた静かな空間が訪れる。

「いいの?」
「ああ。坂田からだった」
「そういえば、今大きな案件抱えていますもんね。仕事の電話?」
「いや、飲みの誘いだろ」

知ってるよ。奥様からの電話だって。私が晋助さんの事既婚者だって知っているのを晋助さんが知るのはいつなのだろう。

一目惚れだったんだ。入社してからずっと憧れで、2年目に突然晋助さんから告白された。すっごく嬉しくて夢みたいで、浮かれた。晋助さんはあまり自分の事は語らなくてプライベートを知る同僚はあまりいない。けれど、坂田さんは私と晋助さんが付き合い始めた事に気づいていたみたいだった。

「ういちゃんさぁ。高杉と付き合ってるだろ?」
「え? 違いますよ?」
「別に社内恋愛だから隠さなきゃとか、そういう問題じゃねぇから」

意味がよくわからないその言葉。どういう事ですかと紐解けば、坂田さんは晋助さんの幼なじみだという事、高杉は結婚していて浮気を繰り返しているから気をつけろと忠告を受けたのだ。信じたくなくて、ちゃんと確認しようと休憩室にいる晋助さんに話しかけようとしたが、休憩室の扉を開けて、すぐに閉めた。そこには携帯で電話をしている晋助さんがいた。聞いたこともない優しい声、見たこともない楽しそうな表情。女の勘というものなのだろうか。坂田さんの言ってることは、本当だとそれだけで確信してしまったのだ。

「飲みかぁ。前、坂田さんと3人で飲んだ時はすごく楽しかったなぁ」
「今、坂田の話しはいいだろ」

そう言った晋助さんはまるで拗ねたように、更にキツく抱きしめてきた。いいんだ、別に。ここにある体温は今だけは確かに私だけのものなのだから。嘘のように幸せな空間を手放せるほど、私は強くもないし優しくもないの。

title:サディスティックアップル



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