周りに目凄く腫れてるよなど心配されながらも上司に呼ばれたので、いつもいる奥の部屋の扉をノックして、中に入った。

「仕事だ」

机の上に投げ渡された写真に写っているのはライだ。よりにもよって、私にこの仕事が来てしまうのか。そうだよな、私の仕事は組織を裏切った人達の始末なのだ。

「依頼者は?」
「俺だ」

ジンの鋭い目付きが私を射抜く。断わるなんて出来ないから、了解ですと言う他なくて。処理は任せると言われた。

……私がこの組織を裏切るしかないのかもしれない。ライ、いや赤井秀一を殺るなんてどうしても出来ない。何も良い作戦が思い浮かばないまま震える手でライへ電話をかけた。指定した場所は夜道の峠。ライも内容がわかっているのかわかったと言って電話が切れた。

夜、人気のない峠。向こう側から見慣れた車がやって来て車から降り、夜景を眺めている私の元にやって来た。

「赤井秀一って言うんだね」
「ああ。……今日のデートは夜景が綺麗な所だな」

何を言っていいかわからなくて、ついさっき知った本名を確認してみた。続ける言葉がわからなくてなんとなく隠し持っている銃を撫でるだけで、今は手をつける気にはならなかった。きっとライも銃を隠し持っているはずだ。

「ねぇ、ライ。私ねやっぱりライが好きなんだ」

横に並んだライの顔は見れないままでいた。でも、もう泣かないとは決めて今日ここに来た。自然と柵を持つ手に力を込めてしまう。

「私、組織を抜ける事にした。けど、許してなんかもらえないからライが上手いこと私を殺してくれたらなぁ、なんて」

願ったり叶ったりじゃないか。私が言うが早いかライはもう私の頭に銃を突きつけていた。

「いいよ。そのまま撃って」
「少しは抵抗してくれないか」
「無理。ごめんね。ライとも一緒にいられないし私はライを殺すことも出来ない。今更一般社会で生きていくなんて無理。なら、ライに殺されるのが1番幸せ」

ふとライの気が緩んだのを見抜いて私もすぐに銃を構えた。あのまますぐ撃ってくれれば良かったのに。ちょっとでもライが私に対して何かを思ってくれているのかなと少し嬉しくなってしまうじゃないか。

「ちょっとは揺らいでくれた?」
「これでもかなり動揺しているんだ。自分がういに本気だと気づいた時から」
「そっか。それが聞けて嬉しかった」

迷わずに引鉄を引いたけれど、軽く避けられてしまった。こんなにも無鉄砲にここに来てしまったのだ。私にはもう死しかない。発砲音を聞いて直に警察も来てしまうだろう。

「ライ。ありがとう。早く撃って? ライならこの後の処理楽でしょ? FBIなんだから」
「この状況で組織から逃げるのは骨が折れそうだ」

もう1発発砲音。ライが銃口を向けた先は地面だった。

「行け。うい」
「何で……」
「出頭でも高飛びでもなんでもしろ。これで俺たちの関係もお終いだ。別れよう」

遠くからパトカーのサイレンが聞こえる。頭の隅でその音を聞きながら必死にライへの答えを考えるけど、答えは出なかった。

「また、どこかで」

咄嗟に私はライに一礼をしてその場を後にした。また、違う所で出会えたらその時には答えは見つかっているのかな。そう思うもこの先どうして行けばいいかすらの答えもないのに。けれど、愛した人に残してもらったこの命を無駄にはしたくないとさっきより近くで聞こえるサイレンに耳を塞いだ。



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