組織に潜入した時、なぜか惹かれるスナイパーの存在があった。上杉うい。組織の方では若い方だったが淡々と1人で任務をこなしている姿に興味を持ったから近づいた。

そしたら俺に気があるようで、これは使えると付き合い始めたはいいが仕事以外は純粋な彼女に徐々に惹かれ始めている自分がいた。

俺が初めての彼氏らしく最初は利用されるために恋人を演じられている彼女を可哀想だと同情さえしていたが、段々と本気になっている自分もいた。

しかし俺はスパイで彼女は組織の人間である事に変わりはない。俺に至っては組織を潰すために任務を遂行していかなければいけない。思いついたのは徐々に正体をバラして早く俺の元からいなくなるように仕向けることしか出来なかった。

彼女が来る日を狙ってわざとジョディに電話をかけたりしてみたが、彼女は素知らぬ振りを決め込んでいた。きっとジンからも何か言われている筈なのだが。

今日も彼女を家に呼び出して、わざとFBIの仲間に電話をかけた。バレるようにしたのは俺なのに見つけてくれた時の気持ちは何とも言い表し難いものだった。彼女と向かい合わせに座って顔色を伺うと目には涙をためていた。

「報告……しないのか。かなりの手柄になるぞ」
「何で、そんな淡々としてるんですか。私、私は」

ついには嗚咽を漏らしながら泣き出してしまった。抱きしめたい。そう思ったがもう叶わぬ行為であって。

「組織は多分ライの正体に薄々感づいています。ジンがそう言ってたから。ライ、逃げないの? 私にはもう組織に報告するしか道は無いのに……」

涙を流しながら俺の目を見て真っ直ぐにそう言ったうい。ああ、彼女と違う形で出会えてたらどんなに良かったか。

「ライ、何か言ってよ」
「…………好きだ、うい」
「何それ、ひどいよ。私も、私も好きなのに……」

俺も我慢が効かない男だったのか。今夜だけ。今夜だけ最後に恋人同士でいさせてくれとういをキツく抱きしめて慰めるように額にキスをした。やめてと彼女は逃げようとするが逃がさないと無理やり口付けて抵抗させなくして、俺は酷い男だと自嘲しながら彼女を求めた。



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