月曜の朝、バレないように私が先に先生の家を出て学校へと向かった。学校に着くと何やら騒がしい。いや、私を見るや否や皆が声を潜めて何かを言っている感じだった。

そんな事をされては心当たりしかない。ただ、援交がバレたのか先生の家に泊まった事がバレたのか。はたまた両方なのか。

私は気に止めてない風を装いながら、席に座るがこうも注目が集まっていては居心地が悪いものだ。直接聞いてくる勇気が無いくせに。そんな事を思いながら1限目の準備をしていると高杉先生を呼び出す校内放送が流れた。私の名前も呼ばれるのかと身構えたが私の名前はそこには無かった。なら、私に対する耳打ちはただの噂レベルなのか。私が呼ばれないという事は、ホストしてた事でもバレたな。そうちょっと私だけが知っている先生に優越感を感じているとクラスのどこからか声が上がった。

「何で上杉さんは呼ばれないの?」

その言葉に続き口々にそうだよねぇなど波紋が広がっていく。

「何のこと?」
「みんな噂してるよ? 上杉さんが援交してるだとか高杉先生の家に泊まってるだとか」
「それどこ情報?」

近づいてきた女の子が見せてくれたのはLIMEの画面でそこには私か高杉先生かわからないくらいの角度と遠さの写メだった。

「こんなのでわかるわけ」
「じゃあ、こっちは?」

次にスライドして見せられたのはスーパーで2人で買い物をしている時の写メだった。こちらは先程の写メと違い私である事も高杉先生である事もハッキリとわかる写メだった。これは言い逃れできない。

「因みにこの写メ生徒ほとんどに渡っちゃってるから」
「だろうね」

余裕な態度の私が気に食わないのかもういいわと自分の席に彼女は戻っていった。確かにあんなにもハッキリとした写メがあるのなら何で私を呼ばないのだろう。大人の先生から事実確認をしているだけで、直に私も呼ばれる事は確実。それに優しい先生の事だから私の事は何も言っていないのかもしれない。

元々援交自体バレたら退学する気でいたけど、誰かを巻き込むつもりなんて一切無かった。次にかかった校内放送は全教室自習をしていてくださいと告げているだけで、一向に私は呼ばれない。あんなにも決定的に私も写メに写っているのに。やはり先生は私の事を庇っている。それしかない。居ても立ってもいられずに立ち上がり教室を飛び出した。とりあえず職員室かと1階へと足を急がせた。

職員室の扉をノックして開くとそこは重苦しい空気が流れていて、奥のソファでは高杉先生と校長先生が向かい合わせに座っていた。開かれた扉の先にいる私に視線が一気に注目し、担任が結局呼び出すつもりだったから入りなさいと言われて扉を閉めた。校長先生は私を確認すると口を開いた。

「生徒もどのような騒ぎか知っている様ですし、全ては高杉先生がした事だと生徒には説明してください。私達は場所を移しましょう」

……やっぱり庇ってた。私達は隣の会議室に移動をさせられた。私の両親も呼び出していたみたいだが、あの両親が子どもの為に動くわけがないのだ。校長先生、教頭先生、生徒指導、担任と次々に入ってくる大人に囲まれた。担任が確認するねと口を開いた。

「上杉さん、高杉先生が言うにはおじさん達に絡まれてるところを見つけた高杉先生が保護をした。上杉さんの家庭事情を知った高杉先生が無理やり家に泊まらせたで間違いはない?」

間違いしかない。それにホストという単語も援交という単語も出てこなかった。援交はただの尾ひれ背びれがついて出てきた噂なのだと知る。それより問題は教師の家に生徒が泊まった事。横目で高杉先生を見ると小さく首を縦に振った。そうだと言えと言うことだろう。そんなのは嫌だ。

「ちが」
「そうだよな。上杉。嫌がってたのにすまなかった」

何でこんなに私を庇うのかがわからないけれど、高杉先生のその姿と空気に流されて私は大丈夫ですと嘘の真相を認めてしまった。先生達が少し安堵の表情を浮かべる。

「上杉さんは教室に戻っていいですよ」
「えっ、でも」

ほら、行くわよと担任に連れられ教室に戻されてしまった。高杉先生とちゃんと話しをさせて欲しい。どうしてあんなに優しくしてくれた先生だけ犠牲にならなければいけないのだろう。やり切れない思いを抱えながら教室に戻っても居心地が悪いだけだった。



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