食事に行こうと誘われてからも一向に連絡は無かった。トキメキを返して欲しいなど勝手なことも思ったが、お互いがこんな生業なので、時間を合わせるのも難しいかと思い直し、この密かに生まれた恋心は終わりと思っていた頃だった。

またライとペアでの仕事が舞い込んできた。仕事内容は5人のターゲットを始末。私の本来の仕事だ。どうやらライもスナイパーらしく今回の人数に対し1人は厳しいだろうという話だそうだ。いつもなら1人で受ける人数なのに、急にペアを組まされる事になったのはどうしてなのだろうと少し疑問を抱えつつも、ライとまた会えるという事実の方に心が踊ってしまった。

デートと言うには程遠いが組織が利用しているバーの個室を借りて、作戦会議をする事になった。ターゲットの資料と地図を広げ作戦を立て始める。仕事の仕方が似ているのかペアの仕事が苦手な私でも特に意見をすること無く、作戦会議を終えた。時間が余ってしまったなとなんとなく時計に目をやるとライが気まずそうに口を開いた。

「この間は食事に誘っておきながらなかなか連絡出来ずにすまなかった」
「気にしてないですよ」
「仕事の延長みたいになってしまうが、今からでもいいか?」

大丈夫ですと答えると会計を済ませ外に出る。ライ行きつけだという近くのバーに移動をした。またそれぞれにお酒を注文し、会話は色気の全くないライフルの話しをしていた。けれども、こんなに趣味の話ができる人もいないのでつい熱くなってしまいライに本当に好きなんだなと言われた。

3杯飲んだところで2人とも次の日も仕事があるとの事でお開きになった。お店を出て会計をしてくれたライにお礼を言うと、家まで送ると言われた。

「では、お言葉に甘えて」

そう言うとライは先に足を進めた。前に1回送ってもらっただけなのに、もう道を覚えているのか。優秀な人だと思う。その背中に着いていき隣に並んだ。やはりライ相手だと何を話していいかわからなくて、仕事の話に戻してしまった。

「お互い5人相手なんて1人で出来そうなのに、なんでペア組まされたんですかね?」
「それは、俺から買って出たからだ」
「え?」

人通りのない夜の道。ライは足を止めて私と向き合った。

「俺がういに会いたかったただの口実だ」
「それって、どういう」
「好きだ」

腕を引かれてそのまま唇と唇が重なった。突然の事に固まってしまっている私に離れていった唇はすまないと呟きまたライは何事も無かったかのように歩き出す。その背中を混乱している頭の中から必死に待ってくださいと言葉を紡ぎ呼び止めた。

「返事も聞かずに、行かないでください。人のファーストキス奪っておいて」

その事実に驚きながらもそれはすまなかったとまた私に近づいて頭を撫でられた。からかわれているのかなと思う反面、やっぱり嬉しい自分がいる。

「その、私もライの事が好きです……」
「なら、何も問題はないな」

そのまま抱きしめられて、私もライの背中に手を回した。思いもよらない事実にこれは夢なのかと思った。けれども、ライの感じる体温は確かで自分の顔が熱いのも確かだった。



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