自分に恋愛事は縁が無いと思っていたし、気づいたら犯罪に手を染めあげていて、今や組織の殺し屋だ。今日も上から命令が下り、仕事に取りかかる。

大体が組織を裏切る人の始末に回されるのだけれども、久々に薬の取引に回って欲しいと頼まれた。容姿が幼い方なので、たまに遊園地や賑やかな所での取引に悪目立ちをしないという理由で駆り出される事があるのだ。

組織は好んで黒の服を身に纏うのだが、私は少女系の服を好んで着ていた。ロリータとまではいかないが、フリルのスカートやセーラー襟のトップスなどが好みだ。あの方がいいと言っているのだから良いのだろう。ただ、あの黒の集団にいると目立ってしょうがないのが難点なのだが、仕事をする時にも周りが私に警戒心を持ってこないので、とても重宝している。

薬の取引をするに当たって最近入ってきたというライという人物と仕事をする事になった。やはり黒のYシャツにパンツも黒。頭にはニット帽をかぶっている彼。ただ、どこか危なげな雰囲気に惹かれてしまったのか。一目惚れってあるんだと思った。

その日の薬の取引は問題無く終え、ライに家まで送ってもらえることになった。私は隔てなく誰とでも会話が出来ると思っていたが、ライ相手だと何を切り出していいのかわからない。車中にはラジオの音しか流れていない。今日1日一緒にいて、ライは無口な方だとは思っていたがここまで喋らないとは。距離を縮めたかったがそんな思いとは裏腹に車は私の家の前で停まってしまった。

「送ってもらってありがとうございました」
「いや、このくらい。そうだ連絡先を聞いておいてもいいか? 今後一緒に仕事する時にすぐ連絡がとれた方がいいだろ」
「そうですね」

お互いの連絡先を交換し、登録を終えて車のドアを開けようとしたらおいと呼び止められた。

「何ですか?」
「今度2人で食事でもどうだ?」

ライが私の事をどう思っているかは知らないがこんな願っても無いチャンスを逃す訳にはいかない。普段なら冷静に断りを入れる私なのに。

「ぜひ」
「では、また」

私が車を降りると静かに発進をして曲がり角に消えていった。家に帰り、ソファに沈みこむ。携帯を手に先程登録をした諸星大の文字を見るだけで嬉しくなってしまう。今度の食事はどういう格好をして行こうか。どんな会話をするのだろうか。そんな乙女な妄想が止まらないのだ。

恋の力は恐ろしいのよとベル姉の言葉を思い出しながら、それに同意しか出来ない自分は何かが一瞬にして変わってしまったのだろうか。そんな自分に心臓は早く鼓動を打っていた。



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -