日本に戻れと言われた。ういお嬢様の専属に代わると言われ。荷物をまとめて、日本へと帰って来た。久々の日本の空気を吸いながら懐かしい屋敷へと向かう。

一緒にういお嬢様の専属になるという土方と合流し、今までお嬢様のお世話をしてたというばあやからういお嬢様の事を聞いて顔合わせをした。

大きいソファにこじんまりと座るお嬢様がいた。ばあやに促され2人で挨拶をしたものの俺達に興味が無いのか素っ気ない態度で子どもらしくないなと思った。それよりもとばあやはいつ居なくなるのかを聞いていた。その時寂しそうに眉を寄せていてやっぱりまだ子どもなのだと思った。

ある昼下がり、自分の仕事も終え夕食まで特にする事のなかった俺は少しお嬢様の事を知ろうとおやつを片手に部屋の扉をノックした。中から不思議そうな声ながらもどうぞと声が聞こえ中に入ると、ソファに腰をかけて読書をしていた。

「読書中、失礼します」
「どうしたの? 何かあった?」

声は冷静だけれどもその目は俺の持っているおやつに目を輝かせている。読書、始めたばかりでしたか? と聞くと首を横に振ってしおりを挟み本を閉じた。

「おやつ……」
「食べますか?」

急に顔が明るくなって、その場で座り直すういお嬢様の前にリンゴジュースとチョコクッキーを並べる。どちらも一級品もの。嬉しそうにクッキーに手を伸ばすお嬢様を横目に読んでいた本を手に取る。それは高校生くらいが読むような文体の恋愛ファンタジーものだった。

「本が好きなんですね」
「うん。いろんな世界を体験出来て楽しいの」

学校と屋敷の行き来で、どこにも遊びに行かせてもらえないお嬢様。本の中でしか冒険が出来ないのか。

「今度、俺が外に連れて行ってやるよ」
「高杉さんが?」

思わず敬語が取れてしまったがういお嬢様は気にもせず、そういう冗談は嫌いっていう顔をしている。

「ああ、必ず」
「約束ね」
「それと、晋助でいい。さん付けはなんか性に合わない」

確かめるように晋助と呟いたういお嬢様は楽しそうにまたクッキーに手を伸ばした。

「晋助、何ニヤニヤしてるの? 気持ち悪いわね」
「いえ、ちょっと昔の事を思い出していまして」
「そう。そういえば、出会った頃俺が外に連れて行ってやるって励ましてくれたわよね」
「約束しましたね。まだ果たしてませんけど」

ういお嬢様のお部屋。あの時と同じチョコクッキーをおやつに。傍らの飲み物は甘いものにはホットのストレートティーと好みが大人になっていくお嬢様をみて、別れが近い事にまた悔しさを覚えるのだ。

inspiration:曲・ロメオ



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