お風呂上がりに食べようと楽しみにしていたアイスが無い。今日の全てのモチベーションをここにおいていたのに。考えなくても犯人はあの人しかいないわけで。
ソファの真ん中を陣取り煙草をふかしながら、テレビを見ている左馬刻の隣に座った。
「左馬刻くんさぁ、冷蔵庫のアイス食べたでしょ」
「……食ったな。美味かったぞ。あれ」
「でしょうね。有名店の期間限定ものだったんだよ! 食べるなんて信じらんない!」
「そんなに食べたきゃ名前でも書いとけ。2つ買ってきてういはもう食ったもんだと思ってたわ」
確かに言っていなかった私にも非があるかもしれない。けど、いつも甘いもの自分から食べないじゃんかぁ。何でこういう時だけ食べちゃうのかなぁ。落胆してる私を見兼ねたのか頭を撫でられる。
「また、買ってきてやるよ」
「今日が最後だったの」
……左馬刻と喧嘩なんかしたくないんだけど、食べ物の恨みは恐ろしいんだぞ。悔しさしか湧いてこない……。ちょっと涙目になってきた。その様子をじっと見ていた左馬刻に両肩を掴まれたと思ったらいきなりキスをされた。舌まで入れてきてこの男は何を考えてるんだ。逃げようとすればするほど追い詰められるようなキスに頭がボーッとしてくる。少しして唇が離れていく。
「これで許せ」
「はぁ? 信じらんない」
私は怒っている。怒ってるんだ。なのに、左馬刻は楽しそうに笑っているし。相変わらずこの俺様の思考回路が読めない。
「んな、真っ赤な顔で言われても説得力ねぇぞ」
「うるさい!」
近くにあったクッションを投げつけてやりたかったけど、煙草の灰が舞うのは勘弁なのでその変わりに、腕を軽く小突いてやろうとしたが、
「アイスの味したろ?」
その言葉と共にその手を引っ張られ、抱きしめられてしまった。
「煙草の味しかしなかったわ。ばーか」
こんな事されてもアイスはもう返って来ないのに。許しそうになっている自分に更に悔しさが増すだけだなのだ。
Inspiration:確かに恋だった