*夢主はもう1匹の猫設定

人を好きになったんだ。とても素敵な事だと思う。けれども私には許されない事なのだろう。同じ会社で働く同僚の人。とても気さくで一緒にいると楽しくて。好きだと伝えられたらどんなにいいのだろうと夢をみる。

「ここは恋愛相談所ではないぞ」

草摩本家のはとりの部屋。こんな事話せるのは、はとり以外にいないからここは私の恋愛相談所みたいになっている。他の同い年の2人でもいいけれど、紫呉に話したらからかわれるし真剣に聞いてくれなさそう。綾女は……論外だ。ちょっとズレたアドバイスが返ってきそうだ。だから、消去法ではとりになるのだけれど。そりゃ、ちょっとは迷ったよ。はとりに恋愛相談なんて。

「で、ういはどうしたいんだ?」
「どうしたいって。付き合って一緒にいたいなって思う。思うけど」
「思うけど?」
「そこ、聞く?」
「悪い」

そう言ってお茶を1口飲んだはとり。周りに怯えていたくなくて、飛び込んだ一般社会。気をつけながらも普通に社会人生活を送っているから、楽しい毎日だけれども。この物の怪付きという弊害が恋愛というものを遠ざける。

「隠して付き合うのは悪い事?」
「わからないな。理解してくれる人はほとんどいない……としか」
「だ、よね」

きっと、気味悪がられるのがオチだ。そしたらたまに飲みに行って仲のいい同僚の方が賢い考えだと思う。

「答えなんてわからないんだ。思い切ってみたらどうだ?」
「んー。悩むくらいならやめとこうかな、やっぱり」

ふと時計を見ると日付が変わりそうな時間帯。明日も朝から仕事だからそろそろ寝なければ。出されたお茶を飲み干しまた来るねと部屋を出て、自室に戻った。


「草摩さん、今日外回り終わったら飲みに行きません?」
「いいですね。行きましょう」

今日は気になる同僚と外回り。やっぱりこれくらいの距離感でいいんだ。はとりと話しをしてやはりこれ以上近づいてはならないという考えに至った。これなら怖くない。

夜、いつも行くお店よりお洒落なお店の個室に通された。予約してくれていたんだ。適当にお酒とおつまみを頼んで、今日の営業先の話しをする。少しするとお酒とおつまみが机に並び、お疲れ様と乾杯をする。すると、彼が話しがあるんですと真剣な顔をしてこちらを見た。

「何ですか?」
「俺、草摩さんが好きです。付き合ってください」

すごくすごく嬉しい。けれども、

「あ、えっと」
「社内恋愛はやっぱり気まずいですかね。部署も一緒ですし」

そのままこの言葉に乗ってしまおう。やっぱり、怖いよ。彼の顔が見れない。

「そ、うですね。このままの方がいいですかね。バレたりしたら大変ですし」
「ですよね」

軽く笑って彼は忘れてください、さぁ飲みましょうと流してくれた。その優しさにたまらなくなって、鞄を掴んでごめんなさいとお店を飛び出した。涙が止まらないまま本家の門を潜る。慊人に泣き顔を見られないよう細心の注意をはらいながら、向かうは恋愛相談所。静かに扉を開けると、私の顔を見て驚いたはとりを見たら力が抜けてしまって、玄関先で座り込んでしまった。はとりに支えられながら座布団に座る。

「どうした? 何があった?」
「……告白された」
「それで?」
「断っちゃった。やっぱり怖くて。ダメだった」
「そうか」

慰めるように優しく頭を撫でてくれるはとりにしがみついた。ゆっくりと抱きとめてくれるはとりが彼だったら良かったのにと叶わない夢をまた見てしまった。

title:サディスティックアップル



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