ここのところ、天気が崩れていてずっと雨。それでもテニス部は体育館を借りて、屋内で体力作りの為に、走り込みや筋トレを行っている。さすが、強豪。

けれど、私はテニス部のマネージャーでもないので、外で練習をしてくれない限り彼のテニスをする姿を見ることが出来ない。だけれども、体育館で部活の時はいつもより早くトレーニングが終わるので、一緒に帰ろうと携帯でゲームをしながら教室で1人寂しく部活が終わるのを待っていた。

携帯ゲームも飽きてきて、時刻を確認すると17時。そろそろ部活も終わるだろうと思っていたら、メッセージに今、終わったと連絡が入った。わかったと返して、鞄を持ち下駄箱入れに向かう。靴を履き替えて、傘立てから自分の傘を取って待っていると制服に着替えた弦一郎がやってきた。

「お疲れ様」
「いつも待たせてすまないな」

外は相変わらず雨が降っていて、傘を差して駅に向かう。

「大丈夫だよ。雨の日はいつもより帰るの早いもん」
「俺も体を動かし足りなくてだな」

あれだけ動いているのに、まだ動き足りないのか。万年インドアの私にはわからない思考回路だ。私も外で早く弦一郎のテニスする姿見たいなぁ。

「早く雨上がってほしいね」
「ああ。けど」
「けど?」

やはり何でもないとただでさえ傘で顔が見えないのに、目深に帽子を被り直してしまって余計顔が見えなくなってしまった。

「けど、何?」
「…………いいな」

雨の音が強すぎて小さすぎる弦一郎の声が聞こえない。いつも声、大きすぎるくらいなのにどうしたのだろう。なんかいつもと様子が違う。

「弦一郎?」
「雨の日はいつもより早く帰れるからういと長くいれるからいいなと言ったんだ」

そう言って、顔を背けられてしまったけれど傘越しに見えた真っ赤になった顔を私は見逃さなかった。

title:サディスティックアップル



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