「へ? だからここがこうなるの?」
「だからここに代入だっつてんだろ! お前何度この下りすれば気が済むんだ!」
「耳元で怒鳴らないでよ!」

夕方の4時。いつもなら静かなこの部室はとにかく騒がしくて仕方が無い。私達だって中学生。部活にばかり打ち込んでられないのだ。とにかく私は今数学がわからなくて、とても悔しいが跡部に教えてもらっている。

「あっ! だからこう?」
「……だからだな! 何でxがそこにいくんだよ!」
「ちょっと跡部たちうるさいC」
「ごめんね。ジロちゃん」
「俺様に対する態度とずいぶん違うじゃねぇか」
「ジロちゃんは古典かぁ。今回のわからなさ過ぎてヤバイよね」
「もう、ホント嫌になるC」
「ジロー寝たらアカンで。ほら次こっち解いてみ」

どうやらジロちゃんは、ちょっと寝ているのにもかかわらず結構問題集が進んでいるようだ。チラッと跡部を見るとさっきシカトしたのが気にくわなかったのか地味に問題の範囲を広く指摘してきた。

「宍戸さん。地理全然出来てないじゃないですか」
「向日さん。あなた何でこんな問題も解けないんですか。年下の俺でも解けるのに」
「「うるせーーーー!」」

3年が2年に精神的ダメージをくらっていた。今回の地理は都道府県とその都市名を答えるというもの。コレは徹夜でいけるかな。

「がっくん数学今どこ? あっ! 一緒のとこじゃん!」
「だよな! 絶対ここはこうだよな!」
「しかも同じ考えだし」

わからない者同士意気投合。跡部と日吉は足を組んで考える人みたいな体制になって難しい顔をしている。部長と部長候補のこの2ショット売れそうだなと携帯を出したらどうやらがっくんも同じ事を考えていたようだ。

「俺達いいコンビだな!」
「いくらくらいで売れるかな?」
「部長と候補だぜ! それなりな値段で」

後頭部に強い衝撃。痛い痛い!! 私は跡部にがっくんは日吉に思いっきり頭を叩かれた。

「痛いぞ! 先輩殴るなんてありえねー!」
「そんないらない計算してないで、数学やってください。赤点取っても知りませんよ」
「お前もだ」
「もう、跡部の権限で先生達に頭下げてきてよ」
「そんな事出来るわけねぇだろうが。そんな事言ってると今日は帰さねぇぞ!」
「キャー部長卑猥ー」

また頭を叩かれた。そんなバコバコ叩かれた教えてもらった事全部飛んじゃう。またシャーペンを握り直して問題を見る。もう傍らのメモは途中計算で埋め尽くされている。

「宍戸さん。なんで大阪が奈良になるんですか」
「いや、大阪くらいわかるでしょ。宍戸」

気になる会話が耳に飛び込んできたので、話しに入ってみた。どうやら大阪のところに奈良と書いたらしい。

「せんとくんもびっくりですね」

日吉も会話に参加してきた。というか日吉がせんとくんって。少し噴き出してしまった。跡部が何か気になるのか何か言いたそうな顔をしている。

「どうした跡部?」
「せんとくんって何だ?」

がっくんとジロちゃんは笑っているし、日吉とか忍足は呆れ顔だ。宍戸も隠そうとしているけど密かに笑っている。

「せんとくんってこういうのです」

近くにあったプリントにせんとくんの絵を書いた長太郎。なかなかに上手い。こうなると跡部の反応が気になるのかみんな跡部に注目している。

「ふん。なかなかおもしろいキャラクターじゃねぇか」

それほど面白い事は言ってくれなかったので、みんなそれぞれ勉強に戻った。

結果的に赤点は免れたのであった。



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