静かな家の中扉を勢いよく開く音が響き渡った。ういは俺の部屋に遠慮も無しに入って来て、許可もなくベッドに体を投げ出し、枕に顔を埋めてあーと叫び出した。ソファで座って読書をしていたから思わず本を閉じてしまった。そういえば、しおりはさんでねぇ。ベッドに目線をやるとういはまだ叫んでいる。
「どうした？」
「振られた！」
叫びは止んだ。……あのよく分からないヤツか。しかし、なぜコイツは別れるたびに俺の部屋に来ては愚痴りに来るのだろう。俺の気持ちも少しは考えて欲しいものだ。
「だからもう俺と付き合おうぜ」
そう言うとこっちを睨むような視線が飛んできた。しかしこう毎回振られるのも俺としてもキツイものがある。向こうは友達感覚としてしか無いのだろう。いや、絶対に。でないとこう普通に男の部屋に来るハズがない。
「振られるたびにここに来るなよ。俺も抑えるの大変なんだからな」
「大丈夫。跡部は絶対変な気起こさないってわかってるから」
それよりさーと元彼の愚痴が始まった。ういが男と別れる理由は様々だ。それを聞きながら毎回俺だったらこんな思いや不自由はさせないのにと思う。
「ハァー。いい人いないかな」
「俺を目の前にしてそういう事言うなよ。ほら、誰もが憧れるヤツが目の前にいるんだぜ」
｢自意識過剰なヤツは論外です」
｢そのうちいいヤツが現れるだろ。まぁ、俺のところに来ればいつだって付き合ってやるけどな｣
｢だから跡部に関してはありえないから｣
突然、体を起こしたういは言いたいだけ言ってスッキリしたのか帰ると言って何事も無かったかのように帰っていった。毎回、本気で振られるのが怖い俺も俺もだと反省をして、思わず閉じてしまった本の読みかけのページを探した。