「で、友達にはなれたと」
「ああ」

あれから連絡を取って顔を合わせたら挨拶はしてくれる様になった。変化といったらと言ったらそれくらい。ああ、ういが坂田さんから銀さん呼びに変わった。正直高杉より坂田のが邪魔だ。

「ういちゃん、最近いろんな人に積極的に話かけてるみたいだからうかうかしてると他の奴にとられるかもよ」
「お前のおかげでな」

随分ウザがられてるね、俺と言いながらも顔は楽しそうだ。俺は出されたお茶を飲み干す。今日は坂田と2人で来いと高杉に呼び出しをくらってる。一体なんの話しやら。扉が開いて遅くなってすまないと高杉が入ってきた。脇には少し厚い資料を抱えている。

「相変わらず忙しそうだな」
「ああ。それより俺がいない間にういにだいぶ近づいていたようだが」

シスコンめ。二言目が妹のことかよ。やっぱり最後の砦は高杉か?高杉は脇に抱えていた資料を俺と坂田の前に一つずつ置く。

「この間撮影したブランドが姉妹店のブランドを立ち上げるそうだ。そこに2人セットでと仕事がきた。どうする?」
「どうするって俺は別にいいけど」
「俺もだ」

じゃあ、決まりだなと話は終わった様だ。これだけかと坂田と見ると同じ様な事を思っているのか俺と視線が合った。

「高杉。話はこれだけか?」
「ああ。俺が取ってきた仕事だし立ち上げブランドの話だから俺から聞いときたかったんだ。2人とも今日の仕事は終わりだって聞いたからそのまま事務所に寄ってもらおうと思ってな。もう帰っていいぞ」

じゃあ、俺は帰るわと席を立つ坂田。俺もそれに続いて帰ろうとしたら高杉に呼び止められた。

「別に俺はういの恋愛にまで口を出すつもりはないが坂田と付き合われるより土方といてくれた方がまだ安心する。だけど泣かしたら事務所クビな」

冗談なのか本気なのか。俺はわかったと返して社長室を出た。でもこれで高杉からの干渉は無いという事はわかった。携帯を手に話があるとういに送った。家に帰って数時間後、返事遅れてごめんなさい。話しって何ですか? と返ってくる。メールじゃもどかしくて電話をかける。少しのコール音のあとういの声がもしもしと聞こえた。

「もしもし。近い日でヒマなときあるか?」
「今日は仕事終わったのでヒマですよ?」
「そうか。今から会えるか?」

大丈夫ですよと返ってきたので、前の夜に行った店で待ち合わせなと言うとわかりましたと電話が切られた。俺は出かける準備をして店に向かった。少しするとういがタクシーに乗って現れた。入るかと店に入り今日はソファ掛けの個室にしてもらう。前に頼んだ同じ様なものを頼んだあとに、何を話したらいいかわからず無言になってしまうとういが不思議そうな顔をした。

「あの、話って何ですか?」
「ああ、ちょっと料理来てからな」
「わかりました」

少し不服そうにしていたけどすぐに最近あった事をしゃべりだすうい。本当に最初に会った頃と別人だ。料理と飲み物が運ばれてきて俺は酒を一口飲む。よし。

「うい、話いいか?」
「はい」

少しかしこまった俺の雰囲気を感じ取ったのかういは行儀よく膝に手を置いた。

「俺は、ういのことが好きだ。付き合ってくれないか?」

無言。それは、否定なのか肯定なのか。唐突な俺の告白に驚いているなら申し訳ない。

「いきなりの事だし別に今返事を」
「私も土方さんの事が好きです。その、よろしくお願いします」

そう言ったういの顔が真っ赤で愛しくてたまらなくなった。視線を少し俺からズラして口を開く。

「ずっと銀さんと感じは違うなって思ってたんです。でも今土方さんに言われてハッキリわかったんです。私は土方さんのことが好きなんだって」

俺はういの席の隣に移動してういを抱きしめた。ちょっと体が強張っていたけど、すぐに俺の背中に手を回してきてくれて自然と顔が緩んでしまう。ああ、俺って単純だなって頭の片隅でおもった。晴れて付き合うことになった俺たちは、事務所に報告。高杉と坂田にはだいぶ痛い視線をもらったがそんなものは最初から承知の上だ。なぜだか高杉は俺の仕事を増やしてきて、坂田は前以上にういと連絡を取る様になって苦労は絶えないが隣でういが笑っていてくれるならそれでいいと俺は思う。



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