*夢主はもう1匹の猫設定
「苦しいよ」
「そんな激しくしてないですよ」
「ばーか」
声に出したつもりは無かったけどなぁ。なんならいつもより激しかったけど。無機質な部屋に敷かれている布団に横たわっている私と紫呉。お互いただ寂しさを埋めるだけの行為。本家でこんな事してるってバレたら私は慊人さんに殺されちゃうな。
「苦しいって何が?」
「聞かなくていいよ」
「僕は苦しいよ」
「何が?」
「自分が答えなくて人に答えを聞くのはどうかと思うなぁ」
いつも思う。寂しさを埋める相手を間違えたって。
「はとりさんに会いたいから」
「僕だってすぐにでも慊人さんの所に行きたいんですけどねぇ」
腰あたりに腕が伸びてきて後ろから抱きしめられる。いや、抱きしめてるのは違う人か。私も目をつぶって大好きな人の顔を思い浮かべる。好きで好きでどうしようもなくて、けれど部屋すら出られない私は何もできない。つぶっている目から涙が溢れてくる。どうして、こんな事しちゃうのだろう。バレないように鼻を啜ったけど、この目敏い男はすぐに気づいて、自分と向かい合わせにする体制にされてしまった。
「やめっ」
「やっぱ苦しいの? はとり呼ぼうか」
「……最低」
そんな酷い言葉を吐くのに、頭を撫でてくれる手は大切なものを触れるみたいに優しくて。この時折見せる優しさで、寂しさを紛らわそうとする自分が1番最低だと気付かされるのだ。
title:サディスティックアップル