「ういのお友達じゃねーか」

コイツ。今日はタイミングの悪いことに高杉と撮影。ういちゃんとデートしてからは本人に全然会えないのに、シスコン兄貴と仕事は一緒になるんだよな。ういちゃんと連絡は頻繁にとってるけど。さっきからどこか嬉しそうにこっちを見てきやがって。高杉マジでういちゃんに彼氏が出来たらどうすんだ?

「でもあんなに嬉しそうに携帯触ってるういは見たことないな」
「俺、もしかして脈あり?」
「知らねぇ」

一気に不機嫌になる高杉。わかりやすいやつだな。高杉の撮影の準備が出来て、スタッフに呼ばれて撮影に入っていった。その姿を見ているとポージングの仕方だとかふと見せる仕草とかやっぱり兄妹なんだなと思わせる。というか俺ういちゃんのこと見すぎだな。

「では、2ショット撮りますので坂田さんお願いします」
「はい」

俺も撮影ブースに入り高杉の隣に並ぶ。いつも通りに撮影が続き写真チェックに移る。特に問題はなく撮影は終了した。

「なぁ、高杉。俺とういちゃんペアの撮影のオファーとか来てないの?」
「断ってる」
「はあ!?」
「嘘だ」

嘘かよ。マジで焦ったわ。何で俺こんなにからかわれなきゃいけないわけ。妹をそんなに渡したくないか。すると高杉は思い出したように、ああと声を出した。

「ういとお前と土方3人のオファーは受けといたから」
「1人いらないんだけど」
「よろしくな」

俺の肩を叩いて、高杉はスタジオ出て行った。俺もその後を追って控え室に戻る。携帯を見るとういちゃんから"今度撮影一緒ですね。よろしくお願いします"と来ていた。ういちゃんから連絡してくれるのは嬉しいけど。

「進展しねぇな」

誰にも聞こえてない呟きに自分で溜め息をつくしかなかった。

「坂田さんおはようございます。土方さんもおはようございます」
「おはよう、ういちゃん」
「おはよう」

3人での撮影当日。ういちゃんは真っ先に俺のところへ挨拶に来てくれた。その光景に高杉と土方はかなり驚いた様子だ。着替えに向かったういちゃんを見ながら毎日連絡してたかいはあったなと嬉しいけれど、意外とそれ以上の気持ちが湧いてこない。高杉が少し悔しそうにしながら、俺に話しかけてくる。

「随分懐かれたな。よかったな」
「ああ」
「何だ? 嬉しくないのか?」
「嬉しいけど。案外ここのままでもいいかもな」

土方は何の話ししてんだ? という顔をしている。そうか俺がういちゃんとデートしたこと知らないんだっけ?

「あんなに愛想のいいうい初めて見たんだがお前ら付き合い始めたのか?」
「まっさかー。友達にはなったけど」

へーと特に興味無さそうに、俺も着替えてくると土方もスタジオを出て行った。全体的に準備が整い撮影が始まる。始まったのはいいが、スタッフの1人が撮影ブースに入らないとわからないくらいの加減でやたらういちゃんに触っているスタッフがいる。ういちゃんはやんわりと避けているけどこういう時真っ先に高杉が飛んで来そうなのに。……いつものことなのか? そう思っていたけど次の瞬間に腕をさり気なく胸に当てようとしていたので、腕を掴んで止めようとしたが先に違う腕が伸びていた。

「おい。あんまりやってると騒ぎ立てるぞ」

それは土方の腕でそのドスの聞いた声も土方の声だった。俺は伸ばしかけた腕をどうすることも出来ずポケットに突っ込んだ。

「そうそう。もうしないなら黙っててあげるよ」

ういちゃんは私は大丈夫ですと言っているけどこのまま見過ごすと、エスカレートしそうだしなぁ。高杉は俺たちの行動に気づいたのか溜め息をついているけど、他のスタッフは俺たちがただ会話をしているだけに見えているのかそれぞれの仕事している。

「すみませんでした」

小さい声で謝ったスタッフはさっさとういちゃんのメイクを直してブースを出て行った。ういちゃんに声を掛けようとしたけどすぐに撮影が始まってしまった。その後少し気まずい空気があったけど、撮影は終わった。さっきの事でういちゃんに声を掛けようとタイミングを見ていたけど先に声をかけたのは土方だった。ういちゃんに気の無い素振りだったのにズルい奴だな。土方はういちゃんの手を引いてスタジオを出て行った。俺もブースを出ると高杉が出て行った2人の後ろ姿を見ていた。

「気をつけるのは俺じゃなくて土方だったんじゃない?」
「お前はいいのかよ」
「俺は……友達のままでいいわ」

実際それで楽しいし誰より先に挨拶してもらえただけで満足だ。俺はういちゃんの友達でいい。素直にそう思った。



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