事務所のロビーで打ち合わせをしていると入口からういちゃんが入ってきた。目線でその姿を追っているとマネージャーから聞いてます? と言われてしまった。

「ごめん。聞いてる、聞いてる」
「ういさんですか? 坂田さんホント好きですよね」

悪いか、コノヤローとマネージャーといつもの茶番。この打ち合わせが終われば今日の予定は無し。ういちゃんをロビーで待ってようかなと考えているとういちゃんが戻って来て、自販機で飲み物を買い、ロビーのソファに座った。

「では、今日の打ち合わせ終了です」
「あっ、うん。ありがと」

また見てましたねと言われてしまい、ちゃんと聞いてたよと返すとわかってますと返ってくる。入った時からのマネージャーだから、こういう時細かい事気にしなくていいから助かる。

「別に恋愛は自由ですけど一応カメラ気をつけてくださいよ」

しっかりと忠告をしてからマネージャーはじゃあ、明後日お願いしますと帰って行った。別に言われるほどパパラッチに、追いかけられてはいないからそこまで心配することはないけど。ういもブラコンのイメージが強いし、特に問題は無いだろう。俺も自販機で飲み物を買って、ういちゃんの隣に並んだ。

「こんにちは、ういちゃん」
「こんにちは」

前と変わらず素っ気ない態度で返される。

「誰か待ってるの?」
「兄様待ってます。この間いないからいいやと思って帰ったら、普通待ってるだろと怒られたんで」
「いや、それは待つよね」
「坂田さんは帰っちゃいそうな感じありますけど」
「俺からしたら高杉は社長だからね」

俺の事は苦手なんだろうなっていうのは、この間の撮影でなんとなく気づいてたけど、案外会話をしてくれてびっくりした。やっぱりこの間は不機嫌なのもあったのか。でもここで会話が途切れてしまうあたり俺のこと苦手なんだろうなと感じてしまう。自分に素直なタイプだろうし、遠回しに聞くのはよくないんだろうな。嘘偽りなく言われてしまうなら聞きたいことをそのまま聞いてしまうのが俺流だ。

「ういちゃんさぁ、俺の事苦手でしょ?」
「そうですよ。馴れ馴れしいのがちょっと。でも変に取り繕ってないとこは嫌いじゃないです」

ほらね。やっぱ俺の思ったタイプだ。

「俺さぁういちゃんのこと好きなんだよね」
「唐突ですね」
「別にすぐに返事もらわなくていいから、1回デートしない?」
「清々しいくらいグイグイ来ますね」

ちょっと引かれてるけど、振られるなら早いほうがいいし、ここで1回くらいデートしてもらえたらもしかしたらチャンスがあるかもしれない。

「どう?」
「どうって言われても。その前に休み合うんですか?」

おお、いけそう? 俺はさっきマネージャーからもらったスケジュール表を見る。明日か来週の水曜なら空いてると言えば、明日は、休みですねとちょっと残念そうな声。断られるのを覚悟でちょっと冗談気味にじゃあ、明日ねと言うとはい、わかりましたと言われた。

「え? いいの?」
「デートしてみればカップル役で撮影する時の幅が広がるかなって。この間土方さんとカップル役だったんですけど感覚がわからなくて戸惑ってしまったので」
「えっ? 待って、待って。それってデートとかしたこと無いの?」
「異性なら兄様ぐらいですね」

マジなのか。じゃあ、まだファーストキスとかまだってことなのか? びっくりしすぎて言葉が出ないと同時にますます自分のものにしたいという欲が湧き上がってきてしまう。

「……そ、なんだ。ああ! デートどこ行きたい?」
「坂田さんにお任せします」
「わかった。そうだ、連絡先交換していい? 後で待ち合わせ場所とかメールする」

すんなりと俺の携帯に登録されたういちゃんの連絡先。にやけそうになる口元を必死に堪えているとういちゃんの後ろから何してんだ? と低い男の声。

「兄様!」
「今日はちゃんと待ってたんだな」
「だって怒られたく無いし」

そんな会話をしている兄妹だがういちゃんは高杉の腕に抱きついているし、高杉はういちゃんの頭を撫でている。なんかまだこの光景に慣れない。

「で、銀時は何してんたんだ?」

目では俺の妹に何してんだ、この野郎と言っている。この兄に明日、妹とデートするなんて言ったらどうなるかと想像しているとういちゃんがあっさりと明日、坂田さんとデートするのと言ってしまった。冷汗ダラダラの俺に高杉の視線が痛い。

「別に妹のそういう事に口出しするつもりはないがなんで銀時なんだ」

頭を抱えられてしまった。そんなに不満かよ。でも俺が逆の立場で大好きな妹がナンパまがいなことされてるのには、気分が良くないかもしれない。別にういちゃんがいいと言ったからここは俺のペースでいかせてもらおう。悪いとは思うよ?

「お兄様、明日、妹さんを預からせていただきます」
「気持ち悪いからやめろそれ」

うい行くぞとういちゃんと俺を離すように行ってしまった。2人の背中を見送りながら、明日のデートプランを考えなければと事務所を出て帰路に着いた。



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