「は? それってういちゃんの手料理食べたってことか?」
たまたま同じビル内で撮影だった坂田と休憩室で会った。向こうからこの間ういちゃんと撮影した雑誌見たよとヘラヘラと話し始め、いいなー。俺もういちゃんの彼氏役したいわ、ってか彼氏になりてーと自分の願望をペラペラと一方的に喋ってきた。そして、つい高杉が忙しい時に仕事一緒になると家で、手料理くらいは食べさせてくれるかもなと言ってしまたが故に一段とうるさくなってしまった。別に隠すことでもないかとああ、そうだがと答えるとマジかよぉと机に突っ伏して項垂れる。
「美味しかった?」
「高杉が食べたがる理由がよくわかった」
「そんなに美味いんだ。ってか土方、ういちゃんに気ぃあんの?」
予想打にしない質問に口にくわえようとしていたタバコを持つ手を止めてしまった。そんなことはないし、第一ういから誘ってきたしな。ないないと煙を吐き出す。
「ねぇよ。別に。というか」
うい、坂田のこと苦手だからと言おうとしたが何だってコイツの手助け見たいなことをしなければいけない。本人にハッキリ言われて、ダメージを受ければいい。
「何だよ」
「何でもない」
言いかけて言わないのは無しだよなーと胸元にかかっている小道具の眼鏡をいじくり始めた。それしてもういもこんな奴に狙われてさぞかし大変だろうな。
「でもういちゃんに会う機会自体少ないんだよね。この間の撮影で初めて会ったし、それ以降会ってもないし。前からよく見てはいたんだけどね。同じ事務所だし。それまでしゃべったりしなかったけど、一目惚れってやつ?」
確かに何か惹きつけられるものがあるのもわかる。実際、坂田と同じ事を言う奴が出てきてもおかしくはないよなとも思う。そう考えるとういから家に呼ばれた俺は少しだけ特別な気がした。だからと言って好きとかそんなんじゃないけど。
「ういちゃん、土方の事好きなのかな。そんな素振りなかったの?」
「それ以前にういはブラコンだからな。兄貴にしか興味ないんじゃないのか?」
軽いため息をついて、望み薄すぎと落ち込み始める。それにしても何で坂田の恋愛相談みたいな事になってんだ? 本当に俺に何も関係ないな。壁にかかってる時計に目を向けると撮影開始時間まであと少し。タバコの火を消して立ち上がる。
「じゃ、俺行くわ」
「おう」
この後の段取りを頭で確認しながらスタジオに向かう。一瞬ういの笑顔がチラついたのはういの話をしていたからだと思うことにして、俺は仕事モードに切り替え、撮影スタジオの扉を開けた。