小説 | ナノ


 人生レール



こんにちは、軽い挨拶とキス交わしたら世界を歩きだそうと真っ白な世界にレールを描いていく。次の駅で怖いお兄さんに挨拶してもう一度レール描いて逃げ去るよ。君を連れて。

「この世界は十代の世界。自分の好きなように世界を築きあげればいい」

ヨハンはそう言って俺の隣、ゆっくり手を繋いでくれて。そうやって頷いてまた歩き出す。ゴールの見えないレールをぐるぐる。ぐるぐるぐる。目が回りそうだ。次の駅で面白いお兄さんとデュエルをした。次の駅でバイクに乗ってデュエルした。足取りはいつもより軽やかで覚めない夢を再び歩き出す。
けど疲れてきたな。休もうか。ヨハンはそれをみて隣に座った。いつのまにかたくさん引かれたレール。そろそろインクがなくなりそうだ。これじゃレールはかけないな。

「ヨハン、インクがなくなったらどうなる?」
「おやすみだよ」
「そっか。じゃあまた明日、レールかけばいいよな」
「ああ・・・」

歯切れの悪い返事をしながら微笑むヨハンを横目でみて、また歩き出す。

次の駅、悲しくて悲しくて苦しくなった。
次の駅、息が苦しくなってきた。
次の駅、視界が見えなくなってきた。
次の駅、足が動かなくなってきた。
ああ、これじゃガラクタみたいだ。動くこともしゃべることもできなくなって、見えなくなる視界でヨハンを捉えた。ヨハンはどんな表情しているんだろう。いま、どんなことを思ってるんだろう。繋がれた手が伝える温度を頼りにまた歩きだした。
次の駅、誰かが泣いてた。らしい。
次の駅、さっきデュエルした人が手に花を持っていた。らしい。
次の駅、白い部屋があった。
ヨハンが教えてくれる場面。ああ、ああ、そうだ。歩いていくうちに思い出す記憶に壊れだしそうな心を必死に繋ぎ止めて、ぎゅっと手を繋いだ。強く、強く。

「十代、こっからは一人でいくんだ」
「ヨハンはどこにいくんだ?」
「俺にはやらなくちゃいけないことがあるからな」

繋がれた手はゆっくりと離される。開いた扉から漏れた光。遠くを見ると、もうひとつ扉があった。ヨハンは笑ってた。笑って、俺の背中を押してくれた。




「十代さん!」

声、が、した。意識浮上。辺りを見渡すと見覚えのある顔がそこにはあった。

「ゆ、う・・・せい?」
「よかった・・・もうダメなんじゃないかと思いました・・・」

泣きそうな顔してる遊星がうつりこんで、周りをみてみたら白い部屋に隔離されていた。隣の棚にある花瓶には生き生きとした花があって。ここが病院だと理解した。

「覚えてますか?十代さん、一週間前に倒れて、そこからずっと目覚まさなくて・・・もう駄目なのだと・・・」
「え、ああ・・・」

そういえば最近、身体がおかしくて不老不死の力も終わりを告げてきたんじゃないかと思ってた。けど、何故、死ななかった?俺はもうずいぶん生きた。仲間を見送ってきたし、もう俺もいいんじゃないかと思ってた。

(ああ・・・・ヨハン・・・お前か)

あの白い世界。そして最後にみえた扉。レールを正しい方向へ導いてくれたんだ。俺が迷わないように。俺が間違った方へ進まないように。

するい、ずるいずるい。ここからは一人でいけなんて。お前のやることって、俺を見守ることか?あのまま別の扉につれていってくれたってかまわないのに。ヨハンのばかやろう、ばか、

「ばか・・・・」
「十代さん?」

インクはまだまだ切れないのだろ?まだ俺はレールを描けるんだろう?なら次の駅ではヨハンが叶えたかった夢を、叶えられてる。そんな駅にしなくちゃな。

青色の花が揺れた、
まるで背中押すみたく、俺の傍で。


人生レール
(まだ彩りを放つインク片手に)
(最期を告げるまで描き続ける)




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